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社説:超高額薬 保険の在り方に議論を

 厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は、一部の白血病などの血液がんを治療する新薬「キムリア」の保険適用を了承した。

 投与は1回だけで済み、価格は3349万円。1回当たりの薬の価格としては最高額という。

 保険適用で治療費の大部分がカバーされる。既存の治療で回復が見込めなかった患者にとって希望の光となるのは間違いない。

 一方で、懸念されているのが医療財政への影響だ。

 ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑氏の研究を基にしたがん治療薬「オプジーボ」の高価格が批判されたのは記憶に新しい。

 iPS細胞を利用した再生医療など先進的な分野で実用化が進めば、今後も超高額薬は次々登場すると予想されている。

 厚労省は本年度から、高額な新薬の公定価格(薬価)に費用対効果を反映させる新たな制度の本格運用を始めた。

 2017年度の医療費は概算で42兆2千億円に達し、2年ぶりに過去最高を更新した。財務省は、高額薬について保険の適用外とすることも含めた検討が必要だと主張している。

 保険財政の維持を図るのは大切だが、安易な使用制限へと傾いてはなるまい。裕福な患者しか使えなくなるおそれがある。

 新薬で多くの患者が回復すれば、長い目で見て医療費の抑制につながることも考えられる。

 薬の処方しすぎや残薬の多さを見直し、市販薬で代替できるものを保険適用から外すといった対応も検討すべきだろう。

 キムリアは、患者から採取した免疫細胞の遺伝子を改変してがんへの攻撃力を高めるという新しい仕組みを利用している。

 米国では5千万円超の費用がかかる。多額の研究費用に加えて、製造工程が複雑で大量生産できないことが影響しているという。

 厚労省は治療対象者をピーク時で年間216人、販売額を年間72億円規模とみる。月ごとの負担上限を設ける「高額療養費制度」で年収約370万~約770万円の場合、自己負担は約41万円となる。

 中医協では、価格の決め方に異論が相次いだという。妥当性をチェックするために、価格決定過程の透明化が求められる。

 ただ利益を度外視しては開発側の意欲をそぎかねない。どうバランスを取るのか。公的保険の在り方について、患者や市民に開かれた形で議論を深めたい。

【 2019年05月17日 11時32分 】

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