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図書館蔵書、盗難防止に苦慮 京都府南部に800冊超投棄

京都府宇治市で投棄されていた図書館の本。218冊を仕分けてみると複数の自治体の本と分かった(宇治市折居台・市中央図書館)
京都府宇治市で投棄されていた図書館の本。218冊を仕分けてみると複数の自治体の本と分かった(宇治市折居台・市中央図書館)

 京都府南部で、図書館の所蔵とみられる本の大量投棄が次々に見つかっている。捨てられていたのは、判明分だけで京都、滋賀、大阪の3府県11自治体、13図書館の800冊超に上り、無断で持ち出された可能性が高まっている。図書館から消える本は少なくなく、図書館は盗難防止策に苦慮する。

 捨てられていた本の多くは、園芸やクラフト、パソコンなどの実用書。投棄された4カ所はいずれも交通量の少ない山間部の林道、農道や市道沿いだった。うち3カ所では本が十数冊ずつ赤いひもで束ねられていた。

 各図書館が詳細を調査中だが、これまでに把握できた範囲では、宇治市図書館分は、年1度の蔵書点検で所在不明中か、6年間見つからず「不明除籍」とされた本だったという。

 本が傷んだり読まれなくなったりして除籍する場合はバーコードやラベルを剝がしたり塗りつぶしたりするが、京田辺市立中央図書館分はバーコードが残っていた。木津川市立図書館分も除籍されているが、ラベルは付いたままだった。

 図書館から無断で持ち出される本は少なくない。宇治市図書館3館の「不明除籍」は2017年度に608冊、16年度は736冊あった。京田辺市立中央図書館でも毎年約300冊、20館ある京都市図書館は約1900冊が行方不明になるという。

 公共の財産である図書館の本が無断で持ち出されるのをどう防ぐのか。京都市図書館のうち左京、醍醐中央、右京中央の3館には、貸し出し手続きを終えていない本を感知するゲートがある。だが設置コストが大きく、広がらない。

 ゲートのない宇治市中央図書館の安田美樹館長は「蔵書1冊1冊にチップを貼る場合、市内3館の初期投資は2500万円以上となり、年間の図書購入費を大幅に上回る」と指摘する。京田辺市立中央図書館の七五三(しめ)和広館長も「警備強化の予算があれば資料充実に充てたい」と話す。

 全蔵書にチップを貼る作業負担も普及を阻む。京都市教育委員会は「導入は館の新設やリニューアル時でないと難しい」とする。そもそも「ゲートを設けても、無断で持ち出そうという悪意があれば防ぎ切れない」とも。防犯カメラは全館にあるが、「死角があり効果は限られる」。

 図書館の性格上、警備強化に配慮が必要な事情もある。「何を読んでいるのかは個人情報そのもの。じろじろ見るのは難しい」(宇治市の安田館長)。職員の目が自然に届くよう、盗難に遭ったことのある雑誌や旅行ガイド本、道路地図などはカウンターそばに置いている。滋賀県立図書館(大津市)では利用者はかばんをロッカーに預け、館内では中身の見えるかごや手押しカートを使う。

 大量投棄を受け、京田辺市では「貸し出し手続きを済ませましたか」という掲示板を設置した。館内の巡回を強化した図書館もあるが、盗難防止に決め手はなく頭を悩ませる。

 日本図書館協会(東京)は「前例のない事件に心を痛めている。世論に訴えることも検討したい」としている。

【 2019年05月18日 11時00分 】

ニュース写真

  • 京都府宇治市で投棄されていた図書館の本。218冊を仕分けてみると複数の自治体の本と分かった(宇治市折居台・市中央図書館)
  • 図書館の蔵書とみられる本の投棄場所
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