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社説:裁判員制度10年 市民感覚の反映どう検証

 裁判員制度が始まって21日で10年となる。制度は定着したといえるのだろうか。

 スタート前年の2008年の世論調査では、全体の7割が「参加したくない」としていた。17年の最高裁アンケートでは、選ばれる前は47%が消極的だったが、参加後は96%が「良い経験と感じた」と答えている。

 自らの経験や感覚を実際の裁判に反映させる裁判員の役割について、経験者はおおむね肯定的にとらえているようだ。

 一方で、課題も見えてきた。

 まず、辞退率が高止まりしている。裁判員は有権者から無作為に抽出されるが、昨年は67%が介護などを理由に辞退した。

 最高裁は、運用に影響ないレベルだとする。だが、3分の2が断っている現実は制度の根幹を揺るがしかねない。

 背景には、裁判員の重い負担がある。平均の審理期間は制度初年の3・7日が昨年は10・8日に、平均評議時間も6時間37分が12時間58分に拡大した。

 法廷で当事者が口頭で主張する内容を判断するやり方のため、証人数が増加している。

 昨年、神戸地裁姫路支部で判決があった殺人事件の審理は207日に及んだ。仕事や生活に影響がなかったか気になるが、裁判員に選ばれても休暇を認める企業は多くない。

 参加できる人々の善意に寄りかかりすぎていないだろうか。裁判員制度の意義について社会的な理解が進まなければ、司法に市民参加を求めるという制度の理念は形骸化するばかりだ。

 判決の内容も変化している。

 最高裁によると、性犯罪は裁判官だけの判決より重くなり、殺人や現住建造物等放火は執行猶予付きが増える傾向にある。

 人間の尊厳を冒す犯罪への批判が強まる一方、個別の事情をくみ取る判断が増えていると考えることができる。過去の量刑相場ではなく市民感覚が反映されたといえるのではないか。

 裁判員裁判では当初、求刑より重い判決が相次いだ時期があり、最高裁も一審重視の立場を示していた。しかし最高裁は14年、従来の判例を前提とせずに判断する場合は「具体的で説得力ある根拠を示すべき」と軌道修正するような見解を示し、「求刑超え」の判決は減少した。

 裁判所が市民感覚重視の流れに枠をはめたように思える。だが、市民感覚が判決にどう反映されたかを何らかの形で検証できるようにすることは、制度を持続させる上で重要だ。評議内容の公開についても議論が必要ではないか。

 審理の現場では、裁判所が裁判員の精神的負担を軽減するとして遺体の写真などの証拠採用をしなかったり、加工を命じたりする例もあるという。これに対しては検察側が「真相を明らかにする刑事訴訟法の目的と乖離(かいり)している」と批判している。

 裁判員への配慮が証拠の限定などにつながっているとすれば、被害者や遺族の心情にもかなうまい。公平・迅速な裁判を受ける権利を持つ被告にも不利益が生じるのではないか。

 裁判員制度は今なお多くの課題を抱えている。これからも不断の見直しが求められる。

【 2019年05月19日 16時00分 】

岸田繁 交響曲第一番・第二番 連続演奏会 2019.10.5

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