出版案内
福祉事業団
京都新聞AR

社説:強制起訴10年 市民参加の制度磨こう

 市民が参加する検察審査会の議決で、不起訴となった事案でも強制起訴できる。起訴判断を独占してきた検察の権限に風穴を開ける制度が始まって10年になる。

 司法に市民感覚を取り入れる裁判員裁判の制度と同時にスタートしたが、一般の関心は低い。法律関係者の中からは制度を疑問視し、課題を指摘する声も出ている。

 一方で、強制起訴によって実現した裁判で、明らかになった事柄もある。司法の視点だけでは限界でも、市民の目が入ることで可能になることを物語る。

 市民社会にとって大切な制度である。課題を修正して、制度を磨いていくようにしたい。

 制度への疑問の一つは、実際に強制起訴された数が少ないことだ。この10年間で9件13人、うち有罪は2件2人にとどまる。

 日本の検察は起訴判断が厳密で、有罪率は99%を誇る。そんな検察が有罪を立証できないとして「嫌疑不十分」にした件まで、強制起訴の対象にしたことに無理があるというのだ。

 検察が不起訴、起訴猶予にした処分を、市民の申し立てを受けた検審が「起訴相当」と2度議決しないと強制起訴にならない。だが、1回目で検察判断を認める「不起訴相当」が、昨年までの9年間で約1万8千人と大半を占める。検察の不起訴がひっくり返ることは、まず少ない。

 だからこそ、数少ない強制起訴は重みを持つとも言えよう。初のケースは明石歩道橋事故で、その後も尼崎JR脱線事故、小沢一郎衆院議員の政治資金規正法違反事件、東京電力福島第1原発事故など社会的にみて重大な事件・事故が含まれている。

 明石事故の裁判では、警察幹部が歩道橋を危険と認識していた決裁書類などが明らかになった。JR脱線事故や福島原発事故では、法廷に立った経営トップから直接供述が聞けた。

 法律関係者の中には、刑事裁判は本来、罪を問う場であり、強制起訴は感情的な人民裁判になりかねないとの批判がある。しかし、現実に強制起訴によって新たな証拠や証言が得られ、真相解明につなげる場になってもいる。

 とはいえ、制度に完璧はない。検審の審査過程が非公開▽審査対象者の弁明の機会がない▽検察官役の指定弁護士の大きな負担-といった指摘をしっかりと受け止める必要がある。

 10年を機に議論を始め、よりよい制度にしていきたい。

(京都新聞 2019年05月23日掲載)

【 2019年05月23日 11時00分 】

岸田繁 交響曲第一番・第二番 連続演奏会 2019.10.5

    地域の政治・社会ニュース

    全国の政治・社会ニュース