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社説:徴用工問題 仲裁委を打開の契機に

 韓国最高裁が日本企業に対し韓国人元徴用工への賠償を命じた判決について、日本政府は日韓請求権協定に基づき、日韓に第三国のメンバーを加えた仲裁委員会の開催を韓国政府に要請した。

 韓国側は慎重な姿勢を保っているが、第三者の目を入れて話し合えば、膠着(こうちゃく)状態に陥っている問題の打開策を見いだせる可能性がある。韓国政府はぜひ、前向きに動いてほしい。

 日本の植民地支配下にあった韓国で日本企業に徴用された元労働者と家族が起こしていた損害賠償請求訴訟では、最高裁にあたる大法院が昨年10月と11月、日本企業2社に賠償を命じる確定判決を出した。

 1965年に締結された日韓請求権協定で両国は、日本側が5億ドルを供与することで賠償問題は解決済みと確認していた。

 日本政府は今年1月、協定に基づく政府間協議を韓国政府に求めたが、実現しないまま4カ月が経過している。

 今回、日本が仲裁委開催を求めたのは、韓国の李洛淵(イナギョン)首相が「(韓国)政府が早期の対応策を示すのは困難」と発言したのがきっかけだ。

 原告側が、差し押さえた日本企業の資産売却の手続きを進めており、日本政府として放置できないという判断もある。

 文在寅(ムンジェイン)政権は、司法判断に行政府が介入するのは三権分立に反するとの立場だが、それが政府間協議や仲裁委を開けない理由になるとは思えない。協議の場に出て考えや立場を説明するほうが、韓国にとっても得策ではないか。

 日本側も考慮に入れるべきことがある。

 請求権協定の締結時、韓国はクーデターで誕生した軍事独裁政権下にあった。当時、韓国政府は元徴用工の人や家族から賠償についての要望をほとんど聞かずに日本との交渉を行ったとされる。

 賠償が不十分、という元徴用工らの声は、1987年の民主化まで厳しく抑えつけられていた。日本側も「解決済み」という対応だけでは済むまい。

 政府や自民党には、被告企業の資産が差し押さえられれば、関税引き上げやビザの発給停止といった報復をすべきという声もある。だが、年間1千万人が行き来する両国間でそんな措置は不可能だ。

 重要なのは元徴用工の救済と、未来志向の関係構築につながる対話だ。両国は知恵を出し合ってもらいたい。

(京都新聞 2019年05月24日掲載)

【 2019年05月24日 11時00分 】

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