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社説:自民の選挙公約 責任ある説明が必要だ

 政権党の公約と政府の方針が食い違っていては、有権者は戸惑うのではないか。

 自民党が参院選に向けた公約を発表した。党総裁である安倍晋三首相が力を入れる外交を前面に打ち出したのが大きな特徴だ。

 長期政権で培ってきた各国との関係に加え、選挙までにはイラン訪問や20カ国・地域首脳会議(G20サミット)大阪開催がある。

 首相がメディアに露出する機会が増え、政権担当能力をアピールできるとの狙いがあるのだろう。

 ただ、北朝鮮と北方領土に関する公約は、政府の姿勢と異なる部分がある。北朝鮮に対しては現在の制裁措置の厳格な実施と「さらなる制裁の検討を行う」とした。北方領土については「わが国固有の領土である」と明記した。

 これに対して、外務省が4月に公表した2019年版外交青書からは、18年版にあった「北朝鮮に対する圧力を最大限まで高める」「北方四島は日本に帰属する」との表現が消えている。安倍首相が念頭に置く日朝首脳会談や、北方領土を巡るロシアとの交渉への影響を懸念したためとみられる。

 党の公約で国内向けに強い姿勢を見せ、政府としては当事国に配慮する-。そんな矛盾を抱えたまま選挙に臨むのは、責任ある政権党の態度と言えるだろうか。

 安倍首相は、北朝鮮や北方領土に関する姿勢の変化について口を閉ざしたままだ。党公約と政府方針の違いについて、国会でしっかりと説明する必要がある。

 経済に関しては、アベノミクス6年の実績を強調し、人工知能(AI)やビッグデータなどを活用して、しなやかで強い経済をつくるとしたが、具体策に乏しい。

 景気の後退を示す指標が出始める中、手詰まり感もうかがえる。

 消費税10%への引き上げは主要公約には掲げず、政策集の中で目立たない扱いとなった。「人生100年時代」という項目を立て、社会保障や子育て、年金制度の見直しにも触れたが、財政再建への具体的な展望は見えない。将来への安心感が持てるだろうか。

 改憲では首相が掲げる20年の実現目標の明記は見送った。論議を深めることを掲げているが、自衛隊の9条への書き込みや緊急事態対応など4項目を盛り込んだ理由について具体的な記述はない。

 参院選は政権への中間評価の側面がある。有権者の選択にかなうような判断材料の提供が必要だ。説明が不十分なまま選挙を済ませても、民意を得たとは言えまい。

【 2019年06月11日 13時14分 】

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