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社説:逃亡犯条例改正 香港の「自治」はどこへ

 香港立法会(議会)で審議中の「逃亡犯条例」改正案を巡り、市民らの反対運動が拡大している。

 改正されれば犯罪人の中国本土への引き渡しが可能になり、恣意(しい)的運用で政治的自由が抑圧される恐れがあるためだ。香港に高度な自治を約束した「一国二制度」も形骸化しかねない。

 9日には改正案に反対する大規模デモがあり、主催した民主派団体は103万人が参加したと発表した。1997年の中国への返還以降最大規模のデモで、一部が警官隊と衝突し、19人が逮捕される事態となった。

 香港政府は改正案の撤回に応じず、6月中の可決を目指す構えだが、民主派団体も立法会包囲を視野に徹底抗戦の姿勢を崩していない。行政長官選挙の民主化を求めた「雨傘運動」のように占拠運動に発展する可能性もある。

 完全な普通選挙が行われていない立法会は、親中派が民主派を上回るが、拙速な審議で採決を強行すれば混乱が深まるだけだろう。慎重な対応を強く求めたい。

 条例改正は昨年、香港人が台湾で殺人を犯して逃げ帰り、台湾当局の訴追を免れたのがきっかけだった。

 これを受け、台湾や中国本土など犯罪人引き渡し協定を結んでいない国・地域に、拘束した容疑者を引き渡せるようにし、4月に提案したのが今回の改正案だ。

 香港政府は「政治犯は対象外」とするが、中国では人権派弁護士らを刑事事件で摘発するケースが相次いでいる。市民がうのみにできないと考えるのは当然である。

 中国は立法会の親中派に可決を指示したという。強硬姿勢の背景には、中国から香港に逃げ込んだ「重罪犯」300人余りの存在があるとされる。習近平国家主席の政敵が含まれているとの見方もあり、条例が改正されれば引き渡しを迫ってくるとみられている。

 30年前の天安門事件に関わった中国人学生らの亡命を手助けしてきた民主派団体の幹部も「中国がいつ支援者の引き渡しを求めてくるか」と危機感を隠さない。

 問題は中国と香港の関係にとどまらない。香港の外資系企業や非政府組織(NGO)の関係者も引き渡しの対象になる恐れがあり、国際社会の懸念が深まっている。

 香港政府と中国は、そうした懸念の一つ一つに丁寧に応えるべきだ。「内政干渉」と反発していては不信を増幅させるだけだろう。香港に多くの企業が進出する日本も、傍観者ではすまされない。懸念をしっかり伝える責任がある。

【 2019年06月12日 13時41分 】

岸田繁 交響曲第一番・第二番 連続演奏会 2019.10.5

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