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社説:韓国輸出の規制 自由貿易の立場損なう

 政府は、半導体などの製造に必要な材料3品目の韓国向け輸出規制の強化を打ち出した。

 元徴用工を巡る問題で、韓国が有効な対応策を示さないことへの事実上の対抗措置といえる。

 これに韓国は、世界貿易機関(WTO)への提訴を検討すると表明し反発している。

 日韓関係がさらに悪化し、新たな通商摩擦につながる恐れがある。深く憂慮する。

 日本は、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の議長国として自由貿易の重要性を強調したばかりだ。外交問題の打開手段として、相手国経済に打撃を与えることも辞さない強硬な輸出規制は、貿易立国の立場をも損ないかねない。

 3品目は半導体やスマートフォンの製造に不可欠で、基板感光剤レジストの約9割をはじめ日本企業が圧倒的な世界シェアを握る。

 その韓国への輸出手続きを簡素化する措置をやめ、他の電子部品でも安全保障上の友好国向けに規制を緩和する「ホワイト国」から韓国を除外するという。

 優遇対象でなくなると個別審査に90日程度かかり、サムスンなど韓国半導体メーカーへの生産影響は避けられない。輸出額の約2割を半導体が占める韓国経済の「急所」を狙い撃ちにした形だ。

 菅義偉官房長官は「安全保障を目的とする適切な輸出管理」と説明する一方、元徴用工問題で「信頼関係が著しく損なわれている」と強い不満を突きつけた。

 韓国はG20直前、日韓両国企業の出資で元徴用工への賠償金の財源をつくる案を示したが、日本側は請求権協定違反として一蹴し、G20での首脳会談も拒んだ。

 参院選前に韓国側に強い姿勢を示し、国内保守層の支持基盤を引き締める思惑も透けて見えよう。

 だが、異例の強硬策が韓国側を動かす決め手となる保証はない。文在寅(ムンジェイン)政権が気にする韓国世論をさらに硬化させ、出口の見えない泥沼に陥る危うさをはらむ。

 日本や世界の経済にも悪影響が懸念される。韓国の半導体製品は高いシェアを誇り、供給不安はスマホやテレビなどの完成品や、製造装置の業界にも影を落とす。

 何より通商ルールの恣意(しい)的な運用とみられれば、日本が掲げてきた自由貿易推進との整合性を問われる。安全保障を絡めるのはトランプ米大統領の手法とも重なり、今後の日米貿易交渉での立ち位置を苦しくする恐れもある。

 日韓の深い相互依存関係を踏まえ、報復の応酬でなく真摯(しんし)な話し合いで解決の道筋を探るべきだ。

【 2019年07月03日 13時00分 】

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