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社説:商業捕鯨再開 事業として成り立つか

 日本はクジラの資源管理を話し合う国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、商業捕鯨を再開した。

 戦後、日本が主要な国際機関を脱退した例はない。国際社会での信頼低下が懸念される。

 反捕鯨国が過半を占めるIWCで協議を続けても、4分の3の賛成が必要となる商業捕鯨再開が認められるのは困難と判断し、昨年12月に脱退を表明していた。

 資源が豊富な南極海など公海での調査捕鯨はとりやめとなり、操業は日本沿岸の領海と排他的経済水域(EEZ)に限られる。

 今のところ、過剰な「日本たたき」が盛り上がる状況にはなっていない。オーストラリア政府は日本を非難する声明を出したが、南極海で調査捕鯨をやめたことは「歓迎する」とした。

 だが、国連海洋法条約は捕鯨に関して適切な国際機関を通じて実施するよう求めている。今の状態での商業捕鯨再開は国際法違反だと指摘する専門家もいる。

 政府はIWCにオブザーバー参加すれば問題ないとするが、反捕鯨国から訴訟に持ち込まれるリスクは否定できない。

 そうまでして商業捕鯨を再開しても、事業として成り立たせるには多くの課題がある。

 1988年以降途絶え、約30年もの空白期間がある。回遊ルートや漁場などの情報が不足し、船の老朽化も著しい。

 再び軌道に乗せるのは容易ではないが、税金を使って実施していた調査捕鯨とは異なり、採算面での独り立ちが求められる。

 国は捕鯨対策予算として最近は年50億円程度を計上してきた。2019年度も前年度と同規模を確保したが、捕鯨だけに特別な支援を続ける理屈は立ちにくい。

 一方で消費者の鯨肉離れは進んでいる。62年度に23万トンあった国内消費は、近年は5千トン前後。多くの在庫が問題になった。

 最も供給量が多くなりそうなニタリクジラはくせが強いとされ、売れ行きが心配される。「日本の食文化」との声も一定理解できるが、どこまで国民に共有されているかは不明だ。

 新たな販路の拡大や経費削減が求められるだろう。

 科学的なデータを積み上げてIWC加盟国を説得し、商業捕鯨再開に道を開くというのが日本の長期間の政策目標だった。

 それがなぜ達成できなかったのか。そもそも目標が正当だったのか―。捕鯨の将来を描くには、そうした点から検証が必要だ。

【 2019年07月09日 13時10分 】

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