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自治体に復旧費用重く、未来に影 西日本豪雨の爪痕

宮津市が開いた「財政健全化に係る住民説明会」。市民から質問が相次いだ(2月13日、同市由良・由良地区公民館)
宮津市が開いた「財政健全化に係る住民説明会」。市民から質問が相次いだ(2月13日、同市由良・由良地区公民館)

 「財政は再建したはずではなかったのか」「去年まで黒字だったのになぜ」。京都府宮津市が2月、市内10カ所で開いた「財政健全化に係る住民説明会」。2023年度までの5年間で市財政は40億9400万円の収支不足が発生する―。市の説明に市民は面食らい、戸惑いと不満の声を上げた。

 宮津市は昨年7月の西日本豪雨で河川や市道に甚大な被害を受けた。18、19年度にかかった災害復旧費は16億円近くに達し、財政を直撃。市は今年4月、花火大会を含む観光事業の補助金削減や、人口減に歯止めをかける移住希望者向け「お試し住宅」の廃止に踏み切った。説明会に出た漁業荒砂績さん(65)=同市小田宿野=は「将来への投資も必要。宮津に人が来るチャンスまでなくすのか」と疑問を示す。

 消防団の予算では、訓練出動手当が1回1800円から千円に減額された。説明会で反対意見を述べた元副団長の男性(70)は「災害時は連絡や指揮のつながり、団結力が必要。日頃から訓練しないと、災害時に活動できない」と憤る。

 宮津市だけではない。京都府北部5市2町の災害復旧費は、福知山市の40億6千万円を筆頭に2年間で計116億円を超え、各市町の財政を圧迫している。

 綾部市中心部、JR綾部駅北側の一角に空き地が広がる。「西日本豪雨がなければ、今年にも、市はここで図書館建設に着手しているはずだった」。市議の一人は残念がる。

 市は狭小な現図書館を移転新築する方針を定め、昨年6月に整備検討委員会を発足。まちづくりの核として綾部駅北側の空き地に建設候補地を絞ったが、その1週間後、市内は豪雨に襲われた。災害復旧費は22億円に達し、市はJR高津駅前整備など29事業を中止・延期。貯金に当たる財政調整基金は底を尽きかけ、図書館建設も延期を余儀なくされた。

 市町の災害復旧費は公共土木施設の場合、3分の2は国が出すが、3分の1は市町が負担する。その負担も47・5~95%は国が普通交付税で措置するが、当座は市町が払わねばならない。補助対象外の復旧事業も多く、被害が広範囲に及ぶ災害では巨額になる。

 綾部市は西日本豪雨を含め6年連続で豪雨、台風に遭ってきた。市は昨年7月の被災直後、復旧費について「特段の配慮」を国に求めた。山崎善也市長は「気候変動の時代に入り、国が財政の仕組みを変えないと、自治体は持たないし、市民生活にも影響が出かねない」と危機感を強める。

 市は今も図書館建設の着工時期を明言できないでいる。「今年、豪雨に遭わない保証はない」(市幹部)ためだ。災害は地域の未来にも影を落としている。

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 関連死を含め全国で275人の犠牲者を出した西日本豪雨。京都府内では5人が亡くなった。「あの日」から1年、府北部の被災地を歩き、今もなお残る「爪痕」を見つめる。=全3回のうちの3

【 2019年07月12日 13時19分 】

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