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社説:【参院選】憲法改正 優先順位は本当に高いか

 憲法改正に積極的な勢力が、国会発議に必要な3分の2の議席を維持するのか-。参院選の大きな焦点である。

 自民党は改憲を公約の柱の一つに位置づけ、9条への自衛隊明記など4項目を示している。

 総裁の安倍晋三首相は、改憲に否定的な野党に「議論すらしない」と批判を浴びせる。

 立憲民主党など4野党は、安倍氏の掲げる9条改正には真っ向から反対している。

 野党でも立民などとは一線を画す日本維新の会は教育無償化などの改憲案を掲げており、論議には前向きだ。一方、公明党は与党ながら9条改正には慎重な構えを示す。

 国民には戸惑いがみられる。

 共同通信が2~3月に行った郵送世論調査では、改憲問題に関心があるとしたのは71%。だが6月の電話世論調査では、安倍首相の下での改憲に反対が54%と、賛成の31%を上回った。

 前のめりの安倍氏の姿勢を、国民の多くが懸念していることを示しているのではないか。

 安倍氏が主張する改憲の論拠は分かりにくくなっている。

 当初は、改憲発議の要件を緩和する96条改正に取り組むと表明したが世論の反対で封印、大規模災害などに対処する緊急事態条項の新設に意欲を示した。

 2年前には9条への自衛隊明記を打ち出し、今年に入ると9条改正の理由に自治体の自衛官募集への非協力を加えた。

 改憲すること自体が目的化しているかのようだ。

 自衛隊明記以外の3項目は既存の法律で対応できるとの指摘もある。改憲が必要な理由について、説明は足りていない。

 安倍氏は憲法を「国の理想を語るもの」とし、「国家権力を縛る立憲主義」の観点に立つ野党との主張の隔たりは大きい。

 ただ、立民や国民民主党は、数で勝る自民が進める改憲議論の土俵に乗らないよう警戒するが、衆院の解散権制約などの憲法議論は進めるとする。

 いまの憲法に対する評価や、今後の論議への関わり方について、4野党の立ち位置も分かりにくい。それぞれの立場や主張をもっと明確にしておかなければ、自民案に疑問を持つ有権者を引きつけることはできまい。

 各党の参院選立候補者は、必ずしも改憲を重視していない。

 共同通信が公示前に行ったアンケートでは、優先して取り組むべき課題(複数回答)のトップ3は、社会保障改革、景気対策、子育て支援で、憲法改正を挙げたのはわずかだった。

 改憲より生活に身近な課題に関心を抱く有権者の思いをくみ取った結果とみてよいだろう。優先順位は本当に高いのか、見誤ってはいけない。

 条文をどう変えるかという以外にも重要な論点がある。

 最低投票率の議論である。

 国会発議後の国民投票で、改憲案は過半数の賛成で承認される。現行の国民投票法は有効投票数の過半数でよいとするが、投票率が低ければ、賛成が有権者全体の一部にすぎなくても改憲案が成立してしまう。

 憲法改正を考えるなら避けて通れない本質的なテーマだ。

[京都新聞 2019年07月07日掲載]

【 2019年07月12日 19時31分 】

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