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夢をくれたこと忘れない 公表京アニ事件犠牲10人の仕事

映画「たまこラブストーリー」など京アニ作品の映画ポスターを事件後に掲示している京都文化博物館
映画「たまこラブストーリー」など京アニ作品の映画ポスターを事件後に掲示している京都文化博物館

 京都アニメーションの放火殺人事件で犠牲になった35人のうち、2日に京都府警から氏名が公表された10人。「京アニ」の礎を築いたベテランから次世代のエース、アニメーターの道を歩み始めたばかりの若手まで。シナリオから仕上げまで自社で行い、アニメ業界で独自の地位を築いていた京アニは、アニメーター志望にとっては憧れの的だった。

木上益治さん 61歳 (監督・作画監督)

 東京のスタジオで著名なアニメ作品に関わり、京都アニメーションに転職してきた大ベテラン。線画から紡ぎ出されるキャラクターの躍動感あふれる動きなど、圧倒的な仕事ぶりで「京アニクオリティー」の礎を築いた。

 同社が初めて手掛けたオリジナル映画「ムント劇場版 天上人とアクト人 最後の戦い」でも監督を務めた。公開時には、作品を作る上で、スタッフたちとのコミュニケーションを重視したことを明かし、「やり取りを通して、新しいアイデアが産まれ、表現が洗練され、作品をより良いものへと高めることができました」(パンフレットより)と振り返っている。「響け!ユーフォニアム」シリーズや「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」など、近作のテレビシリーズでも絵コンテ・演出や原画で関わった。若いスタッフには背中で技術や仕事への思いを伝え、師と仰がれた。専門学校時代に同部屋で暮らした渥美敏彦さん(59)は「絵がうまくて早くて。一生懸命取り組む姿に、自分も頑張らないといけないと思った」と話した。

武本康弘さん 47歳 (監督・作画監督)

 女子高生の日常を描いたテレビアニメ「らき☆すた」(2007年)や映画「涼宮ハルヒの消失」(10年)の監督を担うなど、京アニの中核的存在だった。監督を務めた15年の映画「ハイ☆スピード!」の公開時には、京都新聞社のインタビューに「魂であっても、信念であっても、何でもいいんですが、作品には何かがこもっていないとだめ」と、創作への熱情を語っていた。

 父親(76)は2日、兵庫県赤穂市で「康弘はさぞ、熱かったやろな、つらかったやろなと思う。かわいそうで…」と言葉を絞り出した。作品が公開されると、両親のために招待券を送るなど、父親にとっては「自慢の息子」だった。武本さんの妻は自宅前で「今まで作ってきた作品が夫の全てです。それを見ていただいたファンの方が評価していただいていることが、全てだと思います」と語った。

 赤穂市出身の武本さんは大阪のアニメ専門学校を卒業後、京アニに入社。原画や絵コンテ、演出などを担当し、03年に京アニが初めて自社でシリーズ全体を製作したテレビアニメ「フルメタル・パニック?ふもっふ」で初監督を務めた。監督を務めたテレビアニメ「らき☆すた」は、舞台のモデルとなった埼玉県久喜市の鷲宮(わしのみや)神社が、ファンが詰めかける人気スポットとなり、アニメの舞台を訪ねる「聖地巡礼」ブームの先駆けとなった。このほかミステリー要素を持つ学園ドラマ「氷菓」(12年)、「甘城ブリリアントパーク」(14年)、「小林さんちのメイドラゴン」(17年)でも監督を手掛けた。

津田幸恵さん 41歳 (仕上げ)

 線で描かれた動画にコンピューター上で彩色していく「仕上げ」の担当として、映画「けいおん!」や「たまこラブストーリー」「聲の形」「響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ」などの多くの作品に参加した。透明な空気感や時の移ろいで変わる京アニの色彩感を支えた。書籍「私たちの、いま!」に津田さんは「スキャン、ペイントともに実線の太さ等ニュアンスを崩さないように心掛けていた」と記すなど、精緻な仕事を得意とした。

西屋太志さん 37歳 (キャラクターデザイン・作画監督)

 人気作でキャラクターデザインや総作画監督を手掛けるなど、京アニの次代を担う中心メンバーの一人だった。映画「聲(こえ)の形」や「リズと青い鳥」では、作品が描く危うくもろい思春期の人間関係を反映するように、登場人物を繊細なタッチで表現。テレビ、映画にまたがる「Free!」シリーズでは、競泳に青春をかける個性豊かな男子高校生たちを描き分け、作品の人気を引っ張った。

 「今後の抱負」では「もっともっと魅力的な絵を描けるようにがんばります!常に全力の京アニ作品にご期待ください‼」と記していた。西屋さんは「聲の形」で京アニの人気監督山田尚子さんとコンビを組み、7月公開の映画「Free!-Road to the World―夢」でもキャラクターデザインや総作画監督を務めている。北宇治高校(架空)吹奏楽部の青春ドラマを描いた4月公開の映画「響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ」でも総作画監督に抜てきされた。

渡邊美希子さん 35歳 (背景・美術監督)

 映画「けいおん!」や「たまこラブストーリー」「聲の形」「響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ」などの作品に背景担当として参加した。「今後の抱負」では「どの作品にも誠実に目一杯頑張ります」と記していた。京アニがアニメーター志望者向けに開く「プロ養成塾」では、美術・背景科の講師を担当。来年公開の映画「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」では美術監督を務める予定で、同作品の公式ホームページでも告知されていた。

宇田淳一さん 34歳 (動画)

 動画は原画を清書し、その間の動きをつなぐ何枚ものカットを描いていく工程。宇田さんは映画「たまこラブストーリー」や「聲の形」「響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ」などで動画を担当。「今後の抱負」には「作風が違う作品を同時に動かすこともあるので、色んなカットに1つでも多く対応出来る様に努力していきたいです」と記していた。妻は「派手なことはできないけど、細かい部分もこつこつと。時間がかかっても絵を1枚1枚愛情を込めて描く人でした」と、その仕事ぶりを語った。

横田圭佑さん 34歳 (制作マネジャー)

 映画「たまこラブストーリー」や「ハイ☆スピード!」「聲の形」で制作マネジャーを担当。映画「響け!ユーフォニアム 届けたいメロディ」や「響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ」ではチーフマネジャーを担い、作品作りを支えた。

栗木亜美さん 30歳 (原画)

 映画「聲の形」や「響け!ユーフォニアム 届けたいメロディ」「響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ」などで原画を担当。「今後の抱負」について「画力 手に入れるためにがんばります‼」と記していた。

大村勇貴さん 23歳

 今年3月に常葉大(静岡県)を卒業し、京アニに入社したばかり。実家の近所の女性は「小さい時から絵が好きだと本人から聞いていた。本当に優しくて、気さくないい子」「京アニの就職が決まったのを(大村さんの)母親と祖母が大喜びしていた矢先。まだ4カ月しか働いていない」と声を落とした。大村さんが今春から暮らし始めた宇治市内の町内会長前川秀喜さん(65)は、大村さんが「アニメの仕事がしたくて、京アニに拾ってもらえた。自分の持てる力を出し切りたい」と一生懸命に話す姿を覚えている。「礼儀正しい青年だった。次会った時には、アニメの話がしたかった」と手にしたハンカチを握りしめた。

笠間結花さん 22歳

 大阪成蹊大(大阪市)を今年3月に卒業し、京アニに就職したばかりだった。大学パンフレットによると、在学中からアニメの世界を志し、作画やアニメ製作に必要な技法を学んだ。製作の第一線に立つにあたり「今後は『どれだけ意欲的に行動できるか』が課題です」と意気込んでいた。大学パンフレットには卒業生代表として、女の子のイラストとコメントを寄せ、夢の世界に一歩を踏み出す意欲を語っていた。娘が笠間さんの姉と友人という豊中市の女性(58)は「よく3人で一緒にアニメを見ていたみたい。明るくて元気で、笑顔の絶えない子だった」と話した。

【 2019年08月03日 14時50分 】

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  • 映画「たまこラブストーリー」など京アニ作品の映画ポスターを事件後に掲示している京都文化博物館
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