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京アニ事件で教え子犠牲「すごい作品送り出せた」 声落とす恩師

笠間さんがいつも使っていた作画机を前に、思い出を語る糸曽教授(大阪市・大阪成蹊大)
笠間さんがいつも使っていた作画机を前に、思い出を語る糸曽教授(大阪市・大阪成蹊大)

 京都市伏見区のアニメ製作会社「京都アニメーション」(京アニ)の放火殺人事件で、犠牲になった笠間結花さん(22)を4年間指導した大阪成蹊大(大阪市)の糸曽賢志教授(41)が9日までに、京都新聞社の取材に応じた。今春、京アニへの就職をかなえたばかりだった教え子を「キャラクターを動かすことへの執念が強い、生粋のアニメーターだった。いつかファンから名前を覚えられるほど、すごい作品を世に送り出せる原石だったのに」と悔しさをにじませた。

 笠間さんは同大学芸術学部のアニメーション・キャラクターデザインコースで学び、3月に卒業した。糸曽教授は笠間さんが高校2年の時に初めて出会った。教授が高校で行った授業を受けた笠間さんが「会いたい」と研究室に来た。「将来、何をしたい?」と尋ねると、「アニメーターになる」と答えたという。「『なりたい』ではなく、『なる』。こんなに意志が明確な子は珍しい」と期待を寄せた。

 笠間さんは人を笑わせるムードメーカーで、頑張り屋でもあり、周りを引き寄せるカリスマ性も備えていた。学生の企画展示では志願してリーダーを務めた。良いものを作るという意識が強く、泣きながら「思ったようにいかない」と吐露することがあった半面、徹夜をいとわずに製作して周りが納得するように展示会をまとめ上げた。

 糸曽教授は笠間さんを「キャラクターを動かすことが好きな、『生まれながらのアニメーター』」と評する。苦労していた就職活動中も作画の練習に励み、めきめきと実力を上げた。昨年秋に京アニへの入社が決定。「どの作品もキャラクターの動かし方が細かくてきれい」と憧れを抱く会社への就職を喜び「自分も、人が心躍るような動きを描けるようになりたい」と語っていたという。卒業制作は、就職活動に悩む主人公が一生懸命、壁をよじ登り、最後は光に到達する映像を製作し、自身の姿を重ね合わせた。

 事件の1カ月前。糸曽教授の元にLINE(ライン)で「笠間が担当したカットが初めて映像化したんでなんとなく報告したくなりました!」とのメッセージと、アニメ「Free!」の新作映画の予告動画が届いた。「よかったですね!」と返信すると「毎日怒られてますけどね」。行間に、楽しげに仕事に励む様子が伝わる文章だった。これが最後のやりとりとなった。

 あの日、ニュースで事件を知った。「落ち着いたら連絡ください」。不安になって送ったメッセージは既読にならず、後日、笠間さんの母親から訃報が入った。「いつか一緒に仕事をしたかった」。教え子の理不尽な死に、やるせなさが募った。

 「亡くなったことを今でも受け入れられない。また『先生、こんなの描きました』って連絡が来る気がする」。失った存在の大きさをかみしめるように、糸曽教授は声を落とした。

【 2019年08月11日 10時40分 】

ニュース写真

  • 笠間さんがいつも使っていた作画机を前に、思い出を語る糸曽教授(大阪市・大阪成蹊大)
  • 笠間結花さん(大阪成蹊大提供)
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