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社説:森友捜査終結 公判回避は納得できぬ

 学校法人「森友学園」を巡る国有地売却や財務省の決裁文書改ざんで、大阪地検特捜部は佐川宣寿元国税庁長官ら10人を再び不起訴とした。

 特捜部は昨年5月、財務省などの関係者38人全員を不起訴としたが、大阪第1検察審査会が10人について「不起訴不当」と議決し、再捜査が行われていた。改めて不起訴としたことで捜査が終結した。

 国有地を8億円余りも値引きして売却した学園への厚遇や、前代未聞の公文書改ざんがなぜ、どのように行われたのか。公開の法廷で真相に迫る機会が失われ、官僚は刑事責任を問われなかった。

 疑惑の解明を願う国民の司法への期待に応えておらず、到底納得できない。

 再捜査を求めた検審の議決は、文書改ざんを「いかなる理由があっても許されず、言語道断」と批判した。国有地を大幅値引きした背任容疑についても、他の業者らの意見も参考にした客観的な試算を求め、「法廷で事実関係を明らかにすべき」としていた。

 特捜部は、再捜査でも「起訴するに足りる証拠を収集することができなかった」としか説明していない。改ざんで文書の証明力が変わったのか、大幅値引きの根拠とされたごみ撤去額が不適正と認定できるかどうかで、有罪判決を高い確度で得られる立証が難しいと判断したとみられている。

 だが、市民の代表からなる検審の議決を尊重せず、どう再捜査したかも明かさないのでは、検審制度を形骸化させる。特捜部は任意での関係者聴取に終始して家宅捜索を行わず、起訴を求める弁護士らから「結論ありき」「政治的判断」と疑う声も出ている。

 特捜部の膨大な調書が不起訴で公にならないことは、国民の知る権利にとって不利益だ。起訴に厳格なハードルを課すよりも「公判で積極的に証拠を示し、議論すべき」という学識者らの指摘はもっともだろう。

 森友問題の核心は、学園の名誉校長に安倍晋三首相の妻昭恵さんが一時就いていたことが影響し、政権側の関与や官僚による忖度(そんたく)があったのかどうかだ。

 疑惑は払拭(ふっしょく)されていない。佐川氏は昨年3月の国会証人喚問で「刑事訴追の恐れがある」として口を閉ざした。もはや拒む理由はなく、改めて国会に呼んで証言を求め、事実関係の解明を進めるべきだ。政治の責任が問われる。

 うやむやな幕引きは認められない。

(京都新聞 2019年08月12日掲載)

【 2019年08月12日 16時50分 】

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