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社説:安倍改造内閣 政策の優先順位を見誤るな

 安倍晋三首相が第4次政権の再改造内閣を発足させた。

 麻生太郎財務相、菅義偉官房長官が留任し、2012年の第2次政権発足以来の骨格を維持した。

 同時に行った自民党役員人事では二階俊博幹事長を続投させた。

 若手で人気の高い小泉進次郎氏を環境相に起用するなど13人が初入閣したが、清新さは乏しい。

 安倍氏は「自民は老・壮・青の人材の宝庫」と強調したが、山積する課題に取り組んでいくには改造の狙いが見えにくい。

 麻生、菅氏らを動かさなかったのは、政策の継続性というより党内の力関係に変化が生じるのを避ける狙いがあったようにみえる。 初入閣組も、官房副長官や首相補佐官として安倍氏を支えてきた側近が多い。当選回数を重ねた70歳以上が4人もいるのは、派閥からの推薦に配慮したためだろう。

 11月に首相在職日数が歴代最長となる安倍氏だが、党総裁の任期はあと2年。結果を出すには、何に率先して取り組むかをはっきりと示す必要がある。

■社会保障の将来像を

 優先すべき政策課題は明白だ。

 まず、年金を含む社会保障の将来像をどう描くかである。

 安倍氏は自らを議長とする「全世代型社会保障改革検討会議」を設け、担当閣僚を置いて省庁横断的に対応するという。

 6月の金融庁金融審議会の報告書で「老後2千万円」問題がクローズアップされ、国民の不安に火が付いたことは記憶に新しい。

 参院選後に公表された年金の財政検証では、年金受給の先細りが改めて浮き彫りになった。

 社会保障に関しては先行きの厳しさが指摘されて久しいが、抜本的な改革を先送りし続けてきた。老後の安心に向けた負担と給付の関係はどうあるべきか、議論は避けられない。現状を再点検し、幅広い論議の上に、しっかりとした制度改革を進めねばならない。

 10月の消費税増税を控え、景気や雇用への目配りと同時に、人口減少や少子高齢化をふまえた税制についての議論も始めるべきだ。

 軽減税率やポイント還元など消費増税を円滑にスタートさせるための対策が複雑化し、かえって消費者を混乱させている。対策の費用も巨額にのぼり、何のための増税か分かりにくくなっている。

 消費税に対する国民の抵抗感は根強く、拡大する経済格差への懸念も深まっている。参院選で消費税廃止や大企業への課税強化を掲げた政党へ一定の支持が集まったのはその象徴といえる。

 社会保障の拡充や財政再建を目的とする増税なのに、政府はその必要性を説明する努力を怠り、対策という名の安易なばらまきで批判をかわそうとしてきた。

 増税が始まる今こそ、格差解消に具体的な対応策を示し、そのために必要な税制について考える時である。有効な成長戦略や財政健全化への見通しも併せたビジョンを政治の責任で示す必要がある。

 外交は、手詰まり感が強い。

 中国に貿易戦争を仕掛け、イラン核合意などから一方的に離脱して国際協調に背を向ける米トランプ政権に対し、安倍政権は手をこまねいているかのようだ。

■国民への説明が不足

 貿易交渉や武器購入でも米国に押しきられているようにみえる。

 北方領土を巡るロシアとの交渉は進展が見通せない。前提条件なしでの実現を目指す日朝首脳会談の展望も開けないままだ。

 韓国との対立は、通商から安全保障分野にまで拡大している。

 安倍政権が掲げる「戦後日本外交の総決算」は看板倒れになりかねない。どうにかして打開策を見つけ出さねばならない。

 だが、外交の現状に関する説明は決定的に不足している。国民の理解なくして、複雑さを増す外交課題の解決は進められないことを深く認識すべきだ。

 いずれにしても国会でのオープンな議論が欠かせない。にも関わらず、安倍政権は多くの懸案について論戦を避けてきた。

 6月の通常国会閉会後も、与党が野党の閉会中審査要求に応じる気配はなく、来月4日召集予定の臨時国会まで休み続ける構えだ。

 国民に対する責任感の欠如を疑われても仕方ない。政権への信頼感が揺らぐことにならないか。

■改憲は喫緊の課題か

 改造内閣の顔ぶれにも、信頼性に不安を抱かせる面がある。麻生氏は「老後2千万円」の報告書を受け取らず、議論を封じてしまった。社会保障改革に向き合う姿勢が問われる。

 萩生田光一文部科学相は憲法改正などに関し、しばしば「越権」ともとれる発言で物議を醸してきた。教育行政の中立性を肝に銘じてほしい。

 安倍氏はきのうの会見で、憲法改正への強い意欲を改めて強調した。しかし、国民が改憲を喫緊のテーマととらえていないことは世論調査の結果からも明らかだ。

 国民目線で見れば、暮らしや老後に関わる課題こそ議論を急いでほしいはずだ。

 政治のエネルギーを改憲に費やしている場合だろうか。安倍氏に残された時間は有限だ。政策の優先順位を見誤るべきではない。

【 2019年09月12日 13時55分 】

岸田繁 交響曲第一番・第二番 連続演奏会 2019.10.5

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