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「47億円の壁」構想阻む 滋賀県が新生美術館計画凍結

新生美術館の計画「凍結」について、報道陣の取材を受ける三日月大造知事(左端)
新生美術館の計画「凍結」について、報道陣の取材を受ける三日月大造知事(左端)

 滋賀県の三日月大造知事が25日、新生美術館計画の「凍結」を表明した。県立近代美術館(大津市)を大幅に増改築して「美の滋賀」の拠点として売り出す構想だったが、県が自ら本体工事費の上限に定めた「47億円の壁」に苦しんだ。入札不調や目玉施設の削減検討など迷走した末、計画実現は困難な見通しとなり、県議や県民からは「中途半端な対応だ」「残念」と声が上がった。

 「美術館整備を予定通りしたい、とギリギリまで検討したが、金額の制約もあって難しい」。三日月知事は議会での表明後、報道陣を前に苦渋の表情を浮かべた。「県議会との対話の中で47億円に抑えようと進めてきた」と今後も上限を変えない考えを示した。

 新生美術館は近現代や仏教美術、アール・ブリュットと3種類のアートを収蔵展示するコンセプトで、県は「新たな美術領域をつくる」と意気込んだ。

 県は2014年に設計者を公募する際、建設費の上限を47億円に定めた。金沢21世紀美術館を手掛けた建築事務所を選び、ガラス張りの講堂や回廊を備えた美術館を設計した。

 その後、近代美術館の補修費用が想定を超えることが判明しても、三日月知事は「予定額で取りまとめる」とこだわり続けた。それを受けて県議会は昨年3月、上限額の順守を求める決議を可決した。

 同年8月に入札が不調に終わった後、県は経費圧縮のため設計見直しに着手した。10月にレストラン新設を断念する案を示したが、県議会で「コンセプトが崩れる」と批判を受けて撤回。今年6月にはレストラン棟を民間資本で整備するなど新たな見直し方針を出したが、県試算で建設費は52億円に上り、目標に届かなかった。

 この日の県議会代表質問では、自民党県議団が「以前から工事費の順守は大変厳しいと危ぶんできた」と指摘。チームしがも「度重なる設計変更で、コンセプトも中身も大きく衰退している」と疑問を呈した。

 「凍結」方針を受け、県民の意見を聞くため県が設けた会議の委員を務める地域デザイナー北川陽子さんは「当初計画は金沢21世紀美術館のように多くの人を魅了すると期待していた。正直残念だ」と話す。

 県の専門家会議委員で、アール・ブリュットの美術館を運営する社会福祉法人グロー(近江八幡市)の田端一恵企画事業部副部長は「三つの美を柱とする方向性は変えないでほしい」と求めた。

 ある県議は「建設費高騰は今に始まった話ではない。県は額ありきになり、自分で自分の首を絞めた」と批判し、「何を目指すのか分からなくなっている。じっくり立ち止まり、計画を一から作り直すべきだ」と話した。

【 2018年07月26日 12時32分 】

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