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まちの銭湯、28歳経営者が復活 46年一筋営業店主の遺志継ぐ

2年間、都湯を守ってきた北坂由紀子さん(右)と引き継ぐ湊さん=大津市馬場3丁目
2年間、都湯を守ってきた北坂由紀子さん(右)と引き継ぐ湊さん=大津市馬場3丁目

 2016年に店主が亡くなった後、休業していた大津市馬場3丁目の銭湯「都湯」を、京都市内の銭湯経営者湊雄祐さん(28)が11月に復活させる。閉店間際だった同市内の銭湯を引き継ぎ、SNS(会員制交流サイト)の活用や催しの企画で集客数を伸ばした経験を生かし、湖国の銭湯業界に新風を吹き込もうと意気込んでいる。

 都湯は1970年春、故北坂禅吉さんが開業した。禅吉さんは小学3年時に結核を患い、薬の副作用で両耳の聴覚を失った。妻の由紀子さん(72)は「『聞こえなくても負けるか』という気持ちで、熱心に仕事をしていた」と振り返る。

 解体業者から譲り受けた木材を燃料にする作業に、毎日午前9時から午後4時まで没頭。午後10時に営業終了後は毎晩、ボイラーにさび止めを塗るなど手入れを欠かさなかった。病気になり、14年から入退院を繰り返したが、亡くなる直前も「まだ続ける 銭湯やめない」と紙に記した。

 遺志を継ぎ、いつでも再開できるよう、由紀子さんは休業後の2年間も脱衣所を掃除し、モーターを稼働させてきた。「『駐車場にしたら』とも言われたが、46年間大切にしてきて取り壊すなんて考えられない」

 今年6月、都湯の休業を知った湊さんが「経営したい」と申し出た。湊さんは「銭湯文化を守りたい」と、15年5月から「サウナの梅湯」(下京区)を引き継いでいる。住民や若者、外国人観光客を呼び込もうと、浴室や脱衣所で映画鑑賞会や落語会、手作り市を催し、ツイッターなどで発信。当初は1日平均60人だった来店客は現在190人に増えた。銭湯活動家湊三次郎の名で、銭湯復活を呼び掛ける活動をしている。

 由紀子さんは「大事にしてきたものを受け継いでくれる人が現れ、驚いた」と振り返る。「銭湯一筋の禅吉さんの姿勢に引かれた」と湊さん。ボイラー室を見て、「昨日まで営業していたかのように整備されていた」と驚く。

 銭湯コラムニストの林宏樹さんは「ファンが集って銭湯を盛り上げる例はあるが、経営にまで乗り出すのは非常に珍しい。湊さんの取り組みが成功すれば、地方の銭湯経営のモデルになる。一息つけて、老若男女隔てなく集える銭湯を町に残す活動は意義深い」と語る。

 番台など改装し、再開は11月中旬を予定している。湊さんは「地方の銭湯でも経営を軌道に乗せられると証明したい」と力を込める。

【 2018年10月24日 11時37分 】

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