出版案内
福祉事業団
京都新聞AR

「ママー、痛い」重傷女児の両親が手紙 大津の園児死傷事故

防護柵の設置など安全対策が進められている事故現場(大津市大萱6丁目)
防護柵の設置など安全対策が進められている事故現場(大津市大萱6丁目)

 大津市で5月8日に保育園児らの列に車が突っ込み、16人が死傷した事故で、重傷を負った女児(2)の両親、山下奨太さん(33)と遥さん(26)が7日、京都新聞社の取材に文書で回答した。痛ましいまな娘の姿にショックを受けた事故当時を振り返るとともに、体と心に大きな傷を負った娘への思いがつづられていた。

     ◇

 遥さんは、勤務先で会議中、レイモンド淡海保育園から多数の電話が入っていることに気づいた。「熱でも出たのか」と思っていると、親戚や友人からも連絡が来た。胸騒ぎがして園に連絡すると、娘が事故に巻き込まれたと知らされた。

 病院に駆けつけた遥さんは、たくさんの医療器具につながれた娘を見て、絶句した。右足の骨が折れ、体中に傷を負っていた。事故時に舌をかんだようで、舌の半分ほどが黒ずみ、口の周りに血がこびりついていた。顔に木くずや車の塗装片などがついており、事故の壮絶さを感じた。

 娘は、駆け寄った遥さんに「ママー」と泣きじゃくった。「ママー、痛い、ママ抱っこして、怖かった」と懇願する娘の手を握り、「痛かったね、怖かったね」「もう大丈夫だから、ずっと一緒だよ」と語りかけた。奨太さんも駆けつけ、手術までずっと2人で娘の手を握り続けた。

 娘は心にも大きな傷を負った。事故後1週間は、毎晩ガタガタと体を震わせて目を見開き、「ママー、落ちる、いやだー」と、病院のベッドの柵にしがみつき、泣き叫んだ。

 事故から1カ月が経過しても、娘は入院治療が続き、車いすを使う。元々おしゃべりが大好きで、散歩中も「お花きれいね」などと話してくれたが、保育園や友達のことを一切口にしなくなった。

 娘の前では事故のことに触れないようにしている。幼い娘が傷の痛みや家に帰れない不安などに必死に耐えていることに胸が引き裂かれる。「あの事故に巻き込まれなければ」と思うばかりだ。

     ◇

 奨太さんと遥さんは、事故について「一人一人が譲り合いで優しい心を持っていれば、防げたかもしれない」とした。相手が待ってくれるだろうといった「だろう運転」による代償が、幼い子どもたちに向かってしまったことに、「車は一つの判断ミスで大きな凶器に変わる。当事者からすれば殺人と同じ。譲り合いの心をもう一度考え直していかなくては」と記した。

 国を挙げて、交通量の多い交差点にガードレールを設置し、歩行者を保護できるスペースを設ければ、「安心して待機できるのでは」とし、「大人が幼い命を守らなければいけないと感じている」とつづった。

【 2019年06月07日 18時48分 】

ニュース写真

  • 防護柵の設置など安全対策が進められている事故現場(大津市大萱6丁目)
岸田繁 交響曲第一番・第二番 連続演奏会 2019.10.5

    滋賀のニュース