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保育所選考、AIで瞬時に ニーズ増加で効率化も「削減限界」

AIを活用したソフトを使い保育所の入所選考を行う市職員(草津市役所)
AIを活用したソフトを使い保育所の入所選考を行う市職員(草津市役所)

 滋賀県草津市が、保育所の入所選考に人工知能(AI)の試験運用を始めて半年が過ぎた。事務処理にかかる時間が3分の2に短縮でき、市民サービス向上にもつながるとして、秋にも本格運用に移る予定だ。ただ当初見込み以上に職員の事後調整も必要で、AIの限界も見えてきた。

■指標基づき、AIが瞬時に割り振り

 市は昨年度9月補正予算に520万円を計上し、富士通(東京)が同年11月に発売した「AI入所選考ソフト」を全国でいち早く導入した。今年1~2月に行った新年度入所選考の2次調整分の約400人から試験的に運用し、毎月実施する年度途中入所の選考でも活用している。

 同市の保育所や認定こども園の入所選考では、保護者の就労状況や家族の健康状態など約40の指標に基づき、優先度を点数化する。ひとり親家庭や生活保護世帯、祖父母同居などの家庭状況も考慮される。その後、第1~第3までの入所先希望を踏まえ、きょうだいの有無や待機期間の長さなど点数化できない9項目の条件も加味し入所先を振り分ける。

 市幼児課によると、これらの作業に加え、約50ある保育施設との電話での調整に膨大な時間がかかっていた。辞退者が出ると、最初から調整し直す必要もあった。しかし、ソフトに点数と条件、園の空き状況を入力すると、AIが判断し瞬時に振り分ける。試験運用では各施設との連絡回数が約5分の1程度で済んだ。全体の事務処理に要する時間も年間約920時間から約300時間削減できると試算する。

 現在は従来通り、職員による手作業も並行しているが、今秋にもAIに一本化する予定だ。

■「事務効率化は最優先課題」も割り切れない事情

 宅地開発が盛んな草津市は子育て世帯の転入が多く、保育所入所の需要も高い。本年度当初の新規申込数は約1280人で5年前の約1・5倍に増えた。さらに年度途中の入所希望者は毎月約50人に上る。一方、選考に関わる職員は2~3人にとどまる。10月の幼保無償化に伴い保育ニーズの増加が予想される中、「事務効率化は最優先課題」(同課)という。

 メリットは職員の労働時間抑制だけではない。選考結果の速やかな通知や、現在3回行う年度初めの入所選考を増やすことが可能となり、落選した保護者が次の入所希望先を再考するのに時間的な余裕が持てるという。

 一方、課題も見えてきた。点数が同一の場合に9項目を加味して優先順位を決める作業については、本格運用後も人による調整が必要と分かった。導入前は約800時間の事務削減を見込んでいたが、実際は4割以下にとどまるという。

 「申し込みまで電子化すればさらに時間を短縮できる。ただ記入ミスの可能性や家庭の複雑な事情もあり、対面の相談は不可欠」と、担当職員は効率追求だけで割り切れない業務の特質を説明する。

 富士通によると、同ソフトは同市と高松市、尾道市が既に運用し、他に大津市など5市区で導入契約済みという。同市は昨年11月~今年2月の実証実験で効果を確認し、来年4月入所分からの運用を予定する。

 保育希望者が増加していてもAI導入に慎重な自治体もある。年度当初の新規申込者数が約600人という守山市は「昨夏に富士通の説明を聞いたが、うちの規模では費用対効果が低いと判断した」と話す。栗東市も同様の理由で見送っている。

【 2019年07月16日 10時07分 】

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