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これぞ「おもてなし」精神 京都の警察・消防、訪日客に誠実対応

イタリア人の観光客に英語で道案内する東山署員(5月28日、京都市東山区・祇園交番)
イタリア人の観光客に英語で道案内する東山署員(5月28日、京都市東山区・祇園交番)

 訪日外国人の増加に伴い、観光都市・京都の警察官や救急隊員が対応に追われている。言葉の壁に直面しながらも、英語を学び、IT機器を駆使し、落とし物の処理や道案内、救護活動などに当たる。外国人観光客が古都を満喫する裏側で「おもてなし」の精神を忘れずに奔走する人たちを追った。

 多くの観光客が行き交うJR京都駅前。聴覚障害がある米国人男性が5日、府警の京都駅前落とし物窓口(京都市下京区)に駆け込んできた。東山区の寺院でスマートフォンを落としたという。手話を始めた男性に対し、女性職員は「When have you lost it?」と教本を参考に英文を書き出し、身ぶり手ぶりも交えながら紛失時期やスマホの特徴を聞き取った。「スマホのロック解除の暗号なども細かく聞かないといけない。日本人ならスムーズに行くのに」と嘆く。

 府警によると、府内の拾得届の受理件数は50万2291件(2016年)で、10年前の1・8倍に増えた。一方、持ち主に返還できた拾得物は約1割の約6万5千件にとどまる。

 外国人観光客の落とし物はスマホや財布、パスポートが目立つという。持ち主の外国人観光客が帰国してしまうと、国際電話での本人確認や、滞在していたホテルに返還協力を依頼するなど日本人の手続きより3~5倍の時間がかかるという。

 台湾の観光客が落としたカードケースでは、在中のクレジットカードの名前から持ち主を特定し、知人の日本在住者を介して1カ月かけて返した。担当者は「ジェスチャーが伝わらない電話だけのやりとりは色や形、大きさを一致させる作業だけでも大変」と話す。

 府内の外国人宿泊者数は321万人(15年)で3年連続で過去最多を更新した。神社仏閣や有名観光地ではトラブルも多く、東山区の祇園交番には英語が話せる警察官が24時間常駐している。

 花見客でにぎわった4月上旬、同区の路上でけんかの仲裁に入った旅行中の米国人が、男に顔を殴られた。大槻竜一警部補(41)は同交番から現場に駆けつけ、救急車内で処置中だった米国人に「What happened?」と当時の状況を聴き取り、付近にいた容疑者を逮捕した。「京都を楽しんでもらうため道案内も大切だが、交番は事件事故の初動対応の重責がある」と語る。

 急病やけがを負った外国人観光客への対応もニーズが高まる。京都市立病院(中京区)では週1~3日、韓国・朝鮮語と英語、中国語の通訳を配置して患者に付き添うなど、医療現場でも言葉の壁はつきまとう。

 昨年12月、旅行中のインドネシア人男性が右京区の路上で転倒した、と日本人の通行人を通じて119番があった。救護に向かった中京消防署員の安田和正さん(39)は、男性に英語で話しかけたが伝わらない。座り込む男性に対し、翻訳機能付きのタブレットを使って痛みや吐き気、しびれがないか、症状を確認した上で搬送した。

 救急車内では、病院到着まであと数分のところ「あと2分」と具体的に伝えた。安田さんは「異国での急病や負傷の不安は大きいはず。安心してもらえるよう、言葉には気を付けている」と話す。

【 2017年06月29日 11時43分 】

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