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檜皮や庭石確保に職人奔走 京都のウラ側で

ヒノキから採取した檜皮を整形する職人。社寺の屋根改修を裏方として支える(京都市中京区・宮川屋根工業)
ヒノキから採取した檜皮を整形する職人。社寺の屋根改修を裏方として支える(京都市中京区・宮川屋根工業)

 半世紀ぶりの屋根のふき替えが進む京都市東山区の国宝、清水寺の本堂。約2千平方メートルの屋根を覆うには、100万枚以上の檜皮(ひわだ)が必要となる大事業だ。

 ■10年後のために

 「まず、良いヒノキのある山を訪ね歩く。見つけたら、外樹皮を剥いで、檜皮ぶきに使える新しい皮が育つまで10年待つんです」。清水寺に檜皮を納めた宮川屋根工業(中京区)を営む宮川義史さんは苦労を語る。

 寺社の屋根改修に使う檜皮の確保は厳しさを増している。林業の衰退と、檜皮を剥ぐ熟練の技能を持つ原皮師(もとかわし)の不足が原因だ。国は府内の国有林を開放して檜皮の供給に助力しているが、檜皮から銅板ぶきに変わった社寺も少なくない。

 江戸時代創業の同社も檜皮と原皮師の不足に悩む。「霧の濃い山のヒノキは良い檜皮が採れる」との伝えから、遠くは山口県まで足を運んでヒノキを探す。また15年前から自社で原皮師の養成も始め、今では2人の職人が技術を習得した。

 大量に檜皮が積み上げられた作業場では、若い職人が檜皮の形を整えていた。11代目の宮川さんは「現金より材料を持てと先代から言われ続けた。10年後のために今、一生懸命やる。それが社寺文化の継続につながれば」。子どもの頭をなでるように、檜皮に優しく触れた。

 ■現在では採取が原則禁止

 造園会社に石材を卸す北山都乾園(とかんえん)(北区)の5代目、北山利通社長は、なじみの不動産業者から「京町家が壊されそうだ」という情報を聞くと、すぐに駆けつける。

 鴨川水系で採取された「加茂七石」は、京の庭園に欠かせない名石だ。しかし、戦後の規制強化で府内の河川敷では採取が原則禁止された。北山さんは、府外まで足を伸ばして加茂七石に似た石を探してきたが、全国的にも規制が厳しくなった。そこで目を向けたのが、老朽化で解体が進む町家だった。

 昭和初期以前の町家の庭には、加茂七石が使われている例が多く、町家所有者らに譲渡を頼み込む。「手作業で石を整えた戦前は仕事が丁寧。驚くほど良い物が残っている」

 京都を代表する庭師の七代目小川治兵衛も、明治期に平安神宮(左京区)の庭園を作庭した際、五条大橋と三条大橋の橋脚だった石を再利用した。京町家の減少が問題化するなか、庭石は寺社の庭園で生き続けている。北山さんは「町家が消えるのは残念だが、京都では庭石を後世に引き継ぐ伝統がある」と胸を張る。

 国内外の観光客を魅了する京の寺社の建物と庭園。その背景には、材料確保に奔走し、伝統を守り続けようとする職人たちの絶え間ない努力があった。

【 2017年10月23日 17時00分 】

ニュース写真

  • ヒノキから採取した檜皮を整形する職人。社寺の屋根改修を裏方として支える(京都市中京区・宮川屋根工業)
  • 社寺の庭園文化に欠かせない加茂七石の一つ、「鞍馬石」をみせる北山さん。現在は京町家の所有者から買い求めるのが主流という(京都市右京区・北山都乾園)
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