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源氏物語「読み手で変幻自在に」 新訳に挑む角田光代さん

「源氏物語はストーリー自体が面白い。その面白さを感じてほしい」と話す角田光代さん(大阪市北区)
「源氏物語はストーリー自体が面白い。その面白さを感じてほしい」と話す角田光代さん(大阪市北区)

 作家の角田光代さん(50)が新訳「源氏物語 上」=写真=を出版した。千年にわたって人々を魅了してきた紫式部の大作全54帖を、角田さんは全3巻で現代語訳する。現在、中を翻訳中の角田さんに、物語の持つ魅力を聞いた。

 池澤夏樹さんの個人編集で2014年から刊行が始まった「日本文学全集」(全30巻)のシリーズの最後を飾る。角田さんが「源氏物語の新訳を」と提案されたのは13年。「なぜ私?」「まだ早い」と後ろ向きな思いが交錯したが、池澤さんのファンであることから「お断りするなんてできない」と心を決めたという。

 とはいえ、源氏物語は高校の教科書で抜粋を読み、校内の演劇で一部触れただけで、通読したことはなかった。「物語をあまりにも知らず、思いもなかった」という角田さんも、これまでの他の作家が恋愛小説の側面に重きを置くなどしたように、現代語訳をする上での立ち位置を決める必要があった。考えた末に決めたのが「読みやすさ」。地の文の敬語をほぼなくし、現代的で歯切れの良い訳文を目指した。

 上巻に収録したのは、「桐壺」から「少女(おとめ)」までの21帖。光源氏の誕生や、物の怪(け)による夕顔の急死、独特の風情が印象的な末摘花の登場、葵の上と六条御息所による車上対決など、心をひきつける場面が満載だ。だが角田さんは「これでいいのかな」と悩みながら訳していたという。

 「抄訳や意訳にしたくない。でも、分かりやすくしたい。この思いが矛盾するのでは…と悩んだ。上を終えた時、私の中で物語が動き始め、翻訳自体が面白くなってきた」

 紫式部がこの物語を紡いでから千年間、歴史の中に消えることなく読み継がれてきた。その理由を「読む人や環境によって変幻自在に変わる物語だから」と考える。

 「たぶん紫式部はこの話を千年間残そうと思ってはいなかったはず。私は最近、小説とは作者が作るものではないと考えています。書いて世に出せば、後は小説と読み手の中で関係が作られていき、そこに作者は入り込めない。源氏物語はまさにそんな物語で、エピソードだけ、面白い部分だけをつなげても成立する。そんな『隙』があるからこそ、読み継がれてきたと思う」

 角田さんは20代のころに国内外を旅したことで「人間にとって物語は欠かせない存在」と気づいたという。

 「物乞いの人たちが勝手に作った集落にも本屋さんがあり、人は食うや食わずの時も、物語を手放さないと実感した。なぜ人は生まれて死んでいくのか、というシンプルな問いへの答えを知りたいのだと思います。それを追い求めたのが物語と思う。私が源氏物語を通して興味があるのは運命。前世、現世、来世の全部をひっくるめた因果応報で成り立つ人の運命のうごめきが、とても面白い」

 「源氏物語 上」は河出書房新社、3780円。

【 2017年11月11日 20時10分 】

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