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豊臣秀次由来の角形「丁字麩」 滋賀・近江八幡の特産

電熱器を開けると、パンが焼けるようないい香りが漂う。吉井さん(左)が女性たちの作業を見守る=近江八幡市・吉井製麩所
電熱器を開けると、パンが焼けるようないい香りが漂う。吉井さん(左)が女性たちの作業を見守る=近江八幡市・吉井製麩所

 重い電熱器のふたが開くと、ふかふかのパンが焼けるような、いい香りが工場内に漂う。きつね色に焼けた麩(ふ)をかじると、外側はサクサク、内側はしっとり。懐かしいような、素朴な味がする。

 滋賀県近江八幡市の特産品として知られる「丁字麩(ちょうじふ)」。小麦粉からできるタンパク質の一種、グルテンを練り、細長く切って伸ばした上で水にさらし、電熱器でこんがりと焼く。「麩の吉井」として知られる吉井製麩所(同市為心町上)の工場では、女性4人が手作業で製造にあたる。3代目の吉井清子さん(73)は「温度や湿度も日々変わるので繊細な工程。手先が器用でないとね」と作業を見つめる。

 吉井さんは父が麩作りを始め、子どものころから家業の手伝いをしていた。「昔は木くずを燃料に焼いていたんです。小学校に入ったころから母に『上手やなあ』とほめられて焼くのを手伝い、自転車で問屋さんまで配達もしていました」

 麩は一般的には丸い形が多いが、丁字麩は角もちのような長方形。戦国時代の八幡城主・豊臣秀次が、兵糧用に束ねて持ち運びできるよう、角形にしろと家来に命じたことがはじまりだと同市では伝わる。

 県内では麩を食べる文化はそれほど広まっていないが、同市や近辺では身近な存在だ。市内に三つの製造元があり、近江八幡観光物産協会の田中宏樹事務局長(44)=同市多賀町=は「冠婚葬祭などの集まりのときには必ず用意されているし、昔は家に備蓄していましたね。麩を食べて大きくなったようなものです」と笑う。

 麩を水に漬けてふやかし、キュウリやかまぼこなど好みの具材と混ぜて食べるからしあえが名物。戦後、近江牛の評判が高まると、すき焼きの具としても人気を集める。「『おいしい麩やね』と言われるけど、うちのは何の味もついてない。おいしいお肉や野菜のだしを全部もらうのが麩。得してるわ」と吉井さんがうれしそうに語る。

 時代とともに、食べ方も変わる。近年はお茶うけとして食べられるよう、黒ごまペーストとあんを挟む「ちょうじ最中(もなか)」も考案した。吉井さんは「気軽に食べてもらう機会を増やしたい」と話す。

 田中事務局長のお勧めは「ふやかしたものを卵と炒めてもいいし、お菓子感覚でハチミツをつけて食べてもいい」。長い伝統を誇る麩は、今も地元で愛されている。

【 2017年12月24日 17時10分 】

ニュース写真

  • 電熱器を開けると、パンが焼けるようないい香りが漂う。吉井さん(左)が女性たちの作業を見守る=近江八幡市・吉井製麩所
  • 名物のからしあえ。水でふやかして柔らかくなった丁字麩にみそやごまの味がしみこむ
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