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ダム堤体前に謎の壁、正体は 京都、読者の疑問を調査

大野ダムの前の広場に残る壁の遺構(南丹市美山町)
大野ダムの前の広場に残る壁の遺構(南丹市美山町)

■疑問

 「日吉ダム完成20年」の記事(4月14日付夕刊)を読んだ。京都近郊のダム巡りを楽しんでおり、大野ダム(南丹市美山町)を訪ねた時、堤体前に廃虚のような壁があった。何の跡で、なぜ残されているのか。=京都市中京区の54歳女性

■回答

 大野ダムを管理する京都府大野ダム総合管理事務所の担当者と現地を歩いてみた。由良川右岸の府道から、ダム下流側の堤体前に広がる「虹の広場」に入ると、すぐにコンクリート製の壁が現れた。

 高さ、幅は各約20メートル。上部は山形になっており、同じような壁がいくつも平行して立っている。ひびが入っていたり、植物のツタが絡まっていたりと相当の年月を感じさせる。

 「ここはダム建設に使う石材を置いておくためのストックヤードでした」(河合匡管理課長)。建設当時の写真を見せてもらうと壁が5枚あり、その間に砕かれた石材が積まれていたようだ。

 ダムの建設資材となるコンクリートは堤体前でセメントや石材を混ぜ合わせて製造した。石材は旧和知町(現京丹波町)の岩山から切り出し、延長約6キロに及ぶケーブルで運び、ストックヤードに保管していたという。

 大野ダムは旧建設省が由良川の洪水調節や発電を目的に1957年から61年にかけて建設した。当時、資材の加工施設やケーブルが設置され、大がかりな工事現場が出現。作業員ら2千人が生活していた記録もあり、近くに住む東慧さん(83)は「静かな谷が一変し、町のようににぎわっていた」と振り返る。

 その遺構がなぜ約60年たった今も残っているのか。同管理事務所によると、当初は保存する方針ではなかったが、大野ダム建設は高度経済成長の出発点ともいえる工事のため、次第に「当時の最新鋭の土木技術を伝える貴重な現物資料」と位置づけるようになったという。今後も「できるだけ手を加えず後世に残し、多くの人に見てもらいたい」とする。

 ダム周辺には壁のほか、コンクリート製の基礎台や木造の小屋なども残る。年月を経て草木の緑と調和し、魅力的な「ダムの風景」を形成しており、来訪者の目を楽しませている。

■関連商品楽しむ人も

 質問を寄せた女性は、ダムの情報を記した名刺サイズの「ダムカード」集めにはまっているそう。全国各地のダムは外観や構造にそれぞれの特徴がある。それをダムカードや、ダムの形を模した「ダムカレー」などに生かした関連商品が人気を集めている。

 カードは国土交通省と水資源機構がダムへの関心を高めるため、2007年から発行している。貯水量や完成年などを写真とともに紹介しており、ダムを管理する地方自治体や電力会社なども、同じ大きさやデザインで作成している。

 カレーは、ライスを堤体、ルーをダム湖に見立てたご当地メニュー。全国のダム近隣の飲食店が、地場産食材でどれだけ本物の形や姿を再現できるかに挑んでいる。

 各地のダムを訪ねなければ入手したり、味わったりできない「レア感」が人々の心をくすぐるという。女性も「ダムを訪ねた証しになり、次々に集めたくなる」と、魅力を語る。

【 2018年05月27日 17時00分 】

ニュース写真

  • 大野ダムの前の広場に残る壁の遺構(南丹市美山町)
  • 由良川の治水や発電を目的に造られた大野ダム。建設から約60年がたつ(南丹市美山町)
  • 大野ダムと日吉ダム
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