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火縄銃の技術から望遠鏡 江戸の科学者・国友一貫斎、業績発信

国友一貫斎像(夢鷹図部分)=長浜市提供
国友一貫斎像(夢鷹図部分)=長浜市提供

 江戸時代に国内初の反射望遠鏡を製作した科学者、国友一貫斎(いっかんさい)が出生した長浜市で、生誕240年の今年、住民らが一貫斎の業績普及に本腰を入れている。10月には顕彰組織「国友一貫斎再評価委員会」を設立。学術研究や情報発信を進め、業績に反して低い知名度のアップを目指す。

 「一貫斎先生が作った反射望遠鏡は、何を使って光を集めますか」。17日に一貫斎の出生地の同市国友町で同委員会が活動の第1弾として開催したイベント。若手天文研究者の問いかけに、参加した児童の一人が「鏡を使う」と元気よく返答した。

 再評価委は、長浜キヤノン社長で長浜商工会議所副会頭の堀川隆幸氏が委員長を務めるなど、国立科学博物館(茨城県つくば市)や市、市教育委員会、地元自治会の関係者ら22人で構成。宇宙物理の研究者ら6人からなる「学術委員会」も抱え、専門分野について助言を受ける。

 10月の設立会合では、ほぼ同時代を生きた発明家平賀源内(1728~79年)や測量家伊能忠敬(1745~1818年)が教科書に登場するのに比べ、一貫斎の知名度が全国的に低い点が指摘された。再評価委の太田浩司・市学芸専門監(57)は「一貫斎には、技術を受け継いだ弟子がなく、業績が十分に伝えられてこなかった」と理由を分析する。

 一貫斎については、2001年から約3年間、文部科学省の事業「江戸のモノづくり」の一環として、長浜城歴史博物館(同市公園町)や大学研究者、住民グループが連携して研究を行った。03年には一貫斎の製造物の展示も同博物館であったが、以降は研究や顕彰が下火だ。

 再評価委は、知名度向上への鍵は継続的な学術研究だとみる。太田学芸専門監は「単なる偉人研究では後が続かない。一貫斎が製作した反射望遠鏡の精度を現在の望遠鏡と比較分析するなど、業績を科学的に証明する」と意気込む。

 情報発信の一環として、直木賞作家の故山本兼一さんが一貫斎の生涯を描いた小説「夢をまことに」の映画化実現も関係先に働きかけていく。関連行事として12月2日に国友町で市内の演劇団体関係者が小説を脚色した舞台劇を上演する。

 子どもたちへの教育も進めたい考えだ。一貫斎を「子どもの理科離れが進む中、ものづくりへの関心を広げてくれる歴史的人物」(太田学芸専門監)と位置づけ、授業で取り上げてもらうため、市内全小中学の教員を対象にした研修会を、校長らを責任者に据えて行ってもらうという。

 再評価委の一人で、一貫斎の反射望遠鏡を復元した「国友一貫斎」科学技術研究会会長の廣瀬一實さん(77)=同市国友町=は「子どもたちには、火縄銃製作の技術を生かして、生活に役立つ道具を作った一貫斎の仕事に必ず興味を持ってもらえるはず。大人になっても『語り部』として業績を語り継いでほしい」と期待する。

【 2018年11月24日 23時30分 】

ニュース写真

  • 国友一貫斎像(夢鷹図部分)=長浜市提供
  • 国友一貫斎再評価委員会が企画したイベント(17日、長浜市国友町・長浜キヤノン体育館)
  • 一貫斎が手掛けた反射望遠鏡(長浜市長浜城歴史博物館蔵)=長浜市提供
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