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京都・保津川下り“延伸”構想 5・5キロ上流に新船着き場

保津川下りの新船着き場予定地
保津川下りの新船着き場予定地

 京都府亀岡市で建設中の京都スタジアム(仮称)開業を見据え、保津川下りをJR千代川駅付近まで“延伸”する府の構想に、地元の期待が膨らんでいる。観光振興や交通網充実に波及効果を望む一方で、運航開始に向けた具体策に欠き、実現には課題も多いようだ。

 保津川下りは年間25万人の観光客でにぎわう。スタジアム建設地近くの乗船場から京都市右京区の降船場までの約16キロで運航している。府は1月30日、スタジアムの2020年春開業を基軸とした地域活性化策として、現在の乗船場から約5・5キロ上流の月読橋付近に新たに船着き場を設けると発表した。

 唐突とも言える府の構想に、地元の千代川町は歓迎の意向を示す。自治会長の湯浅豊さん(67)は発表直後、流域の区長数人に「駐車場確保が必要になる。府を全面応援しよう」と呼び掛けた。

 というのは、亀岡市の北部地域にとって、スタジアムの恩恵が少ないように思えたからだ。国道9号の渋滞は慢性化し、バイパス道路建設や駅舎改築を要望しているが、実現していない。湯浅さんは「スタジアム開業で、さらなる渋滞悪化を心配したが、観光地になれば交通網整備が進むかも。急に光が差し込んできた」と声を弾ませる。

 ある市議は「スタジアムには反対もあり、住民説明に苦労した。スポーツ振興、地域活性化、インフラ整備に加え、航路掘削による水害抑止効果の一石四鳥になる」と話す。

 しかし、府が大々的に発表した割には、調整不足が目立つ。

 新ルート実現には掘削が必要になる可能性が高いものの、事業担当の府文化スポーツ部は川幅や水深さえ把握していない。府南丹土木事務所は「浅い場所もあり、現状では大人数の乗る船の航行は無理」とし、府河川課も「亀岡市内だけ掘削予算を大幅増額できるのか」と懐疑的だ。府庁内でさえ、構想は共有されていない。

 保津川下りを運航する保津川遊船企業組合の豊田知八代表理事(52)は「打診があれば前向きに検討する。ただし観光客のニーズや航路確保を見てからだろう」と冷静だ。

 また、漁業権を持つ保津川漁協に事前連絡はなかった。磯部和雄組合長(70)は「流路が変わり、工事で水が濁れば漁場に影響が出る。反対ではないが、一声あっても良かった」と戸惑い、組合員から不安の声も出ている、という。

 府は新年度、運航可能な船の大きさ▽掘削の規模▽事業者の選定-などを調査し、20年度開業を目指すとしている。府文化スポーツ部は「川下り船が難しいとなれば、カヌーやラフティングも検討する」と言うものの、準備不足は否めない。事業額も「未定」だ。地元の期待を失望に変えないためにも、具体化への青写真を早く示す必要がある。

【 2019年02月09日 20時40分 】

ニュース写真

  • 保津川下りの新船着き場予定地
  • 府が検討する保津川下りの延伸。新ルートには川幅が狭く、水深が浅い場所もある(亀岡市保津町・宇津根橋付近)
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