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令和に「うるわしい平和の時代」望む “考案者”中西進さん語る

「近代以降の元号は政治の方針だった。『令和』は初めて国民のスローガンになりうるのではないか」(26日、京都市上京区・京都御苑)
「近代以降の元号は政治の方針だった。『令和』は初めて国民のスローガンになりうるのではないか」(26日、京都市上京区・京都御苑)

 平成から令和へ。いよいよ来週の5月1日に新たな「時代」を迎える。初の国書として万葉集の一節から選ばれた漢字2文字に秘められた意味とは何か。新元号の考案者とみられている国文学者の中西進さん(89)=京都市西京区=は26日、京都新聞の取材に応じ、改元への思いを語り、新元号が指し示す「うるわしい平和の時代」に向け、日本文化をつくってきた京都が中心的役割を担うべきだとの考えを示した。

 ―「令和」の考案者と目されているが。

 「のっけからですか(笑)。私は考案者という言い方には抵抗があるのです。何かものを決める時は、まず発議、発案する人がいる。それは分かります。しかし、それは一個人の資格で提案するのではない。しかも、それは素材にすぎない。仮に中西進という人間が令和を考えたとしても、それは出した素材がそのままの形で決まっていったというだけのことです」

 ―数ある国書の中で万葉集から選ばれた。

 「国書と言っても古事記も日本書紀もある。これらは漢文で書かれています。日本らしさを出すとすれば万葉集でしょう。(日本独自に編み出された)万葉仮名で書かれたものが国書とすればやはり万葉集になります」

 ―新元号の感想は。

 「非常に結構だと思います。ほかの案はこなれていないなという気がします」

 「元号として聞き慣れない『ら行』の『令』に驚かれた人もいるようですが、それは今まで気づかなかった新鮮さがあると言うべきでしょう。しかし、元号としては新鮮さだけではダメで、やはりこなれていないといけない。そこで元号としては20回目になる『和』となったのでしょう。

 中国の辞書では令は善なりと書いてあります。善とは、日本ではうるわしいという意味になるでしょう。令嬢という言葉もあります。それは神秘を感じる美とも言えます。そこには尊敬や畏敬の念もあります。ただ、ついにこれまで日本人はその感覚を理解できなかった。抱きしめたくなるような親近感をもたらす美ではなく、荘厳(そうごん)に輝く美をもっともっと発見していくことを新時代に望みたい。

 近代以降の明治も大正も、元号はある意味で政治の方針でした。『令和』は初めて国民のスローガンになりうるのではないか」

 ―万葉集は戦前、軍国主義の中で国民の動員に利用された歴史もある。

 「万葉集を近代化の中だけで考えてはいけない。世情が混乱した時、地下水脈のように流れてきた万葉集がくみ上げられ、よみがえらされてきた歴史は確かにあります。ただ、近代の中だけで指摘するのはいかがなものかと思います」

 ―「和」には平和を願う心が込められているように感じられる。

 「戦争の悲惨さをもっと知ってほしい。私は戦争末期、東京の杉並にいたが、毎晩空襲警報で眠れませんでした。いつも、一夜明けると市街地が真っ赤に燃えている。翌日、動員されている工場に向かうと、駅までの間に焼死体が並んでいる。爆風でみんな裸で、黒焦げ。あおむけだったり、のけぞったり、苦しんだ様子がうかがえました。終戦の2年前には父の転勤で広島にいました。原爆で同級生を何人も失っています。憲法9条をノーベル賞にとか原爆反対への声が日本からもっと起こっていいでしょう」

 ―「うるわしい平和の時代」に向けて京都が果たすべき役割は何でしょうか。

 「京都が第一の役目を担わないといけない。京都は文化を支えてきたところでしょう。残念ながら首都ではなくなったが、もっと基本的で高邁(こうまい)なもの、スピリチュアルな部分は今でもこの国で京都が担っていると言っていいでしょう」

■なかにし・すすむ 1929年東京都生まれ。東京大大学院修了。国際日本文化研究センター名誉教授。筑波大教授、大阪女子大学長、京都市立芸術大学長などを歴任した。宮中歌会始召人。2013年に文化勲章。主な著書に「万葉集の比較文学的研究」(読売文学賞)、「源氏物語と白楽天」(大佛次郎賞)、「中西進著作集」(全36巻)。近著に磯田道史・日文研准教授との共著「災害と生きる日本人」(潮出版社)。

【 2019年04月27日 10時30分 】

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  • 「近代以降の元号は政治の方針だった。『令和』は初めて国民のスローガンになりうるのではないか」(26日、京都市上京区・京都御苑)
  • 「令和」の典拠
岸田繁 交響曲第一番・第二番 連続演奏会 2019.10.5

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