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社説:AMラジオ 豊かな放送文化守ろう

 ラジオの公共性と豊かな放送文化を維持することが、何より重要だ。

 民放ラジオのAM放送を廃止してFM放送に転換できるよう、日本民間放送連盟(民放連)が総務省に制度改正を要請した。

 AM放送には、高いアンテナや大規模な送信設備などが必要だが、FMは比較的小規模な設備で放送できる。

 AM放送を現在のワイドFM(FM補完放送)に切り替えれば、放送設備の更新やメンテナンスなどの費用を大幅に抑えられる、という。

 現在47社あるAMラジオ局のうち、とりわけ経営が厳しいのがラジオ単体の放送局だ。

 インターネットの普及などでラジオ局の広告収入は減少し続け、経営を圧迫している。全面的にワイドFMに切り替えて経営改善を図りたい、という狙いは理解できる。

 一方で、現在も多くの人が従来のAMラジオに親しんでいる。ワイドFMを聴ける機器の普及も進んでいない。

 どのような制度にするにしても、現在のAMラジオのコンテンツ(放送内容)に触れられなくなる人を出してはならない。

 FM放送は電波が届く範囲がAMに比べて狭い。山間部にも漏れなく届けるためには多くの中継器が必要だ。放送局にとっては新たな負担だが、難聴地域を作ってはなるまい。

 従来型のラジオでAM放送を聴いている人の買い換え負担も課題だ。放送局の経営改善策が聴取者の家計を圧迫するようでは、理解は得られない。

 防災面などでAMラジオにはさまざまな優位性があることもあらためて確認したい。

 東日本大震災では生活や安否に関する情報で多くの人がAMラジオに頼った。

 電波が遠くまで届く夜間には、被災地の状況を東北の外に直接伝える役割も果たした。

 逆にネットラジオは、ネットへのアクセスが集中してつながりにくい状態にもなったという。

 ラジオは他のメディアに比べ、自宅の外や1人で聴かれる傾向が高いという調査結果がある。聴取率は下がっても必要とする人は多い。

 一人一人に語りかけるかのような親密感はAMラジオが育んできた独特の文化だ。放送局側はこれを機に、放送文化がより豊かになるよう取り組んでほしい。

【 2019年05月20日 13時11分 】

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