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摂関家ゆかり資料紹介 田島公編「陽明文庫 近衛家伝来の至宝」

田島公編「陽明文庫 近衛家伝来の至宝」吉川弘文館
田島公編「陽明文庫 近衛家伝来の至宝」吉川弘文館

 摂政関白に任ぜられる摂関家の筆頭で、7世紀の中臣鎌足にまでさかのぼる近衛家。「陽明文庫」は、近衛家ゆかりの資料約10万件を保管してきたデータベースだ。

 京都市右京区宇多野に書庫2棟を備えており、奈良・平安期から1200年を超えて伝えられてきた古文書や古典籍もある。

 2018年7月、東京大学史料編纂(へんさん)所の科学研究費グループと公益財団法人陽明文庫は、東大で財団設立80周年記念研究集会を主催した。本書は、その記念図録だ。

 古めかしいと敬遠してはもったいない。本書は、高精細なデジタル画像を多数掲載し、それに基づく最新の研究成果を収めている。

 表紙カバーに、国宝で国連教育科学文化機関(ユネスコ)が「世界の記憶」に登録した藤原道長の自筆日記「御堂(みどう)関白記」をあしらった。さらに、▽10世紀ごろの内裏の間取り▽舞楽の服飾や楽器の画巻▽反平家の謀議に関係した僧・俊寛の動向を記す書状―などの画像を収録する。「明月記」の項目では再利用紙の裏側「紙背」の文字も解読し、書状を通じた交際範囲なども浮き彫りにしている。

 明治維新後、近衛家の東京移住に際しても文書、古典籍は京都に残った。その後、京都帝大への寄託を経て、29代近衛文麿が1938年に法人を設立した時に一括収容された経緯も紹介する。

 研究集会当日、皇太子だった天皇陛下による発表「『車絵』『納言大将軍絵様』『西園寺家車図』 陽明文庫に残された3点の牛車絵図」は、興味深い。牛車の形状やデザインから所有者像を明らかにする試みだ。この日は、10時の開会から夕方の研究者との情報交換会まで出席され、パワーポイントを用いて講演されたと聞く。2003年3月の京都での「世界水フォーラム」で、琵琶湖や淀川水系に触れた基調講演を収めた単著「水運史から世界の水へ」(NHK出版)もまた、刊行された。

 京都での講座6回を収めた「近衛家名宝からたどる宮廷文化史」(笠間書院)も読めば、天皇家を中心とした禁裏・公家文庫に収められた資料のデジタル画像を公開・活用する意義がよく分かる。(吉川弘文館・1620円)

 田島 公(たじま・いさお)1958年生まれ。京都大大学院文学研究科中途退学。宮内庁を経て東京大史料編纂所教授。

【 2019年05月20日 17時00分 】

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