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社説:博物館の将来 社会との関わりもっと

 世界の博物館や美術館の研究者や学芸員が集う「国際博物館会議(ICOM)」京都大会が9月1日から7日まで、国立京都国際会館を主会場に開かれた。

 ICOMは1946年に発足し、3年ごとに開く大会は25回目を数える。国内では初開催となり、120の国・地域から専門家ら過去最多の約4600人が参加した。

 文化都市を掲げる京都で、こうした国際会議が開かれた意義は大きい。「文化をつなぐミュージアム」をテーマに、四つの全体会合で博物館の在り方を話し合った。

 新たな博物館像をどう築いていくか。交わされた議論をぜひ今後の活動に生かしてほしい。

 注目された議論の一つは、西欧が旧植民地から収奪した文化財の返還についてだった。

 もともと博物館の成り立ちは、西欧の帝国主義と密接な関係がある。かつて植民地だった国の専門家が「返還は過去の過ちを是正する第一歩」と訴えたのは、重い問いかけといえよう。

 征服者側の視点で遺産が意味づけされるのは危険である。西欧を手本としてきた日本の博物館も、見直すべき点はないか。

 会議では、アジア各国の美術・文化の発信強化に取り組むことなど決議5件を採択した。

 アジア美術に関しては、各施設でコレクションの保存管理や研究の進展に隔たりがあるという。データベース構築や専門家の交流促進が求められる。

 欧州中心的なモデルを脱却するためにも、アジアの博物館の役割はますます高まるだろう。

 博物館の定義の見直しも協議されたが、時期尚早として採決が延期された。

 気候変動や災害、紛争などが世界的に問題となり、地域とのつながりや貢献も要請される中、社会的な存在として向き合っていく姿勢を示す狙いだったという。

 アマゾンの森林保護活動に取り組むブラジルの写真家は、社会的な課題の発信に博物館も力を入れるよう求めた。

 見送りになったのは、拙速な議論を避けるためだったと前向きにとらえたい。

 人的交流やまちづくりへの貢献といった地域との関わりは、今後の博物館を考える上で大きな鍵となるのは間違いない。

 国際社会や世界経済で、さまざまな対立や摩擦が激しくなり、文化の果たす役割は大きくなっている。社会に必要とされ、地域で愛される博物館へ。関係者の取り組みを期待したい。

【 2019年09月10日 13時10分 】

岸田繁 交響曲第一番・第二番 連続演奏会 2019.10.5

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