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ミツバチは世界を守る

 散り始めた赤いサルスベリの周囲を羽虫が飛び交っている。長いストローを伸ばし、せわしなく花を回る様子は閉店セールに駆け込む買い物客のようだ▼ハチやチョウなどのポリネーター(花粉媒介昆虫)がいなくなると、地球上の8割の植物は種子を残せず絶滅するという。穀物、野菜などの食物や綿などの天然繊維、木材など建材も得られなくなり、人類はもとより生物は死に絶えるしかない▼世界中でミツバチが大量死したと騒がれたのは2000年代半ば。ダニやネオニコチノイド系農薬、蜜を採る植物の減少など、理由は複合的とされる▼総合地球環境学研究所(京都市)のマクシミリアン・スピーゲルバーグ博士は「ドイツ・バイエルン州では、25年間で昆虫が7割も減少。ミツバチを救え―と昆虫保護法の請願運動に175万人が署名した」と話す。欧州では、特に都市住民の関心が高い▼日本でも、養蜂は里山の暮らしの一部だった。今も花背や美山を歩くと、石とトタン板をのせた木箱を林間に見かける。在来種ニホンミツバチの巣箱である。トチやクリ、ソバなど山や畑から蜜を集め、住民の舌を楽しませている▼丹波でハチを飼う友人に聞くと、そろそろハチミツを分けてもらう時期という。山里の小さな営みが、地球の一端を守っている。

[京都新聞 2019年09月04日掲載]

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