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イノシシ「爆発的増加」の恐れも 京都の市街地で出没騒動

赤色の範囲が鳥獣保護区、黄色のポイントがイノシシの出没地点。鳥獣保護区内や周辺に集中している
赤色の範囲が鳥獣保護区、黄色のポイントがイノシシの出没地点。鳥獣保護区内や周辺に集中している

 平安神宮や南禅寺など観光名所が集まる京都市左京区の岡崎地域などに、イノシシが相次いで出没している。昨年5月から12月まで7件計10頭が現れ、市街地を逃げ回る騒ぎとなり、けが人も複数出ている。府内に生息するイノシシは約6万頭と推定され、増加傾向にあるという。専門家は「今後、京都市内で爆発的にイノシシが増える恐れがある」と指摘し、捕獲や防護柵の設置など対策強化の重要性を訴える。

■市街地通じる「獣道」

 市内では昨年5月に東山区のウエスティン都ホテルに1頭が現れ、6月に京都大熊野寮(左京区)に1頭、10月に河原町二条付近(中京区)に1頭と相次いだ。秋以降は岡崎地域に集中し。11月に平安神宮に1頭、12月に東山中高の校内に2頭、京都市動物園や市美術館近くの琵琶湖疏水に4頭が現れた。

 市自治推進室の式部圭課長補佐は「山際に設置されたフェンスがやぶれ、市街地と山林を結ぶ獣道ができたのではないか」といい、この「獣道」から疏水を通り市街地に入り込んだとみている。式部課長補佐は「古い防護柵の点検を進め、捕獲強化も検討したい」と話す。

 イノシシやシカなどの生態を研究している兵庫県立大自然・環境科学研究所の横山真弓教授は「山地に囲まれた京都市内は、すでに相当数のイノシシが生息しているとみられる。年4頭の子を出産するイノシシの繁殖力は大変強く、放置すれば、爆発的に増える危険性がある」と指摘する。

 実際、全国で捕獲されるイノシシの数は急増している。環境省の資料によると、2000年度は14万8300頭だったが、14年度は52万600頭と3倍以上に膨れ上がっている。同省の推計では15年時点で全国に94万頭のイノシシが生息しているとされるが、正確な個体数を把握する手法が確立されていないため、実数はさらに多い可能性もある。

■市街地出没、全国で多発

 市街地に突如イノシシが現れるケースは近年、京都以外にも兵庫や滋賀、福岡、広島、香川、群馬など全国で次ぎ、死者も出ている。横山教授は「全国的に個体数が増え、中山間地域の農村だけでなく、ついに市街地にまで被害が拡大し始めた」と分析する。

 兵庫県では年間約2万頭を捕獲しているが、被害は高止まりの状況という。加えて、イノシシは知能が高く、放置されたごみをあさるなどして人間の食べ物の味を覚えると、時には人間を襲ってでも食べ物を奪うようになるという。横山教授は「人間の食べ物はイノシシを狂わせる麻薬のようなもの。野菜くずや食品を含むゴミの適正な処理、狩猟や捕獲による個体数管理を徹底する必要がある」と危機感を強める。

 府内のイノシシの生息数は約6万頭(環境省推計)とされ、農作物被害は年間1億4千万円に上る。府は21年度までに被害額を半減させることを目指し、イノシシの個体数を減らすべく、狩猟と行政による捕獲合わせて年間1万4千頭とする目標を掲げている。

 しかし、今回イノシシの出没が集中した岡崎地域に隣接する大文字山一帯は、府内でも最大規模の鳥獣保護区(東山・山科)に指定され、狩猟が禁じられている。京都御苑の約50倍にあたる計3400ヘクタールの山林が広がっているが、被害予防として京都市が捕獲しているイノシシは年間で20頭ほどにすぎない。

 東山鳥獣保護区内にある永観堂(左京区)では、数年前からイノシシやニホンジカが頻繁に境内に姿を見せるようになった。同寺の浜野弘胤さんは「夜な夜なイノシシが現れて、コケを掘り起こしている。最近は日中にサルの群れも来て、阿弥陀堂に入り込んでお供えのリンゴやもなかを盗んでいく」と、エスカレートする野生動物の被害に頭を抱える。

 著書「けもの道の歩き方」などで知られる京都市在住の猟師千松信也さんは「保護区で生まれ育ち、狩猟された経験のないイノシシは人間を恐れなくなっている」と語る。

 イノシシは本来、警戒心が強く臆病な性格といわれる。市街地に隣接する市内の山林でも、北山や西山など比較的狩猟者の多い地域では、人間の生活圏を荒らすことはまれという。千松さんは「一律に禁猟とする鳥獣保護区の在り方に限界がきている。イノシシやシカなど増えすぎた種を対象に、くくりわな猟など他の動物に与える影響が少ない狩猟は限定的に解禁するなど、新たな方策を検討すべき段階にきているのではないか」と話している。

【鳥獣保護区】

 野生鳥獣や生息地の保護を目的として、鳥獣保護管理法に基づいて国や都道府県が指定する。イノシシやニホンジカによる被害拡大が影響し、保護区周辺の住民の合意が得にくくなっていることなどから、近年は減少傾向にある。京都府内では2017年時点で61カ所計2万3480ヘクタールが鳥獣保護区に指定されている。

【 2018年01月05日 17時40分 】

ニュース写真

  • 赤色の範囲が鳥獣保護区、黄色のポイントがイノシシの出没地点。鳥獣保護区内や周辺に集中している
  • イノシシの出没場所と概要
  • 琵琶湖疏水を逃げるイノシシ(2017年12月4日、京都市左京区)
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