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伝統技術の継承、障害者に注目 京都、課題解決へ支援

素焼きした陶器に竹の模様を描く大槻さん。両耳が聞こえないが、絵付けの仕事を50年近く続ける(京都市山科区・京都雲楽窯)
素焼きした陶器に竹の模様を描く大槻さん。両耳が聞こえないが、絵付けの仕事を50年近く続ける(京都市山科区・京都雲楽窯)

 清水焼や西陣織など京都の伝統産業で後継者不足が課題となる中、新たな担い手として障害者に注目が集まっている。際立つ集中力に、器用な手先。工芸の世界にマッチした人材は少なくなく、自治体も就労支援に乗り出した。伝統技術の継承、障害者の雇用機会拡大への秘策となるか。

 清水焼団地(京都市山科区)の工房「京都雲楽窯(うんらくがま)」を訪ねると、大槻弘昭さん(66)=同区=が手際よく筆を動かし、小鉢に次々と竹の模様を描いていた。

 大槻さんは5歳のとき、高熱の影響で両耳が聞こえなくなった。京都府立聾学校高等部(右京区)で色彩やデザインを学んだ後、恩師の勧めもあって1971年に同工房に就職した。

 職場では先輩の筆遣いを見よう見まねで覚えた。細かな技術や仕事の決まり事で分からないことがあれば、筆談で教えを求めた。働き始めてしばらくすると、工房独自の「手話」が生まれた。大槻さんに「絵の線を細くしてほしい」と伝える場合、同僚は親指と人さし指の間を狭める。仕事内容を確認したり、休憩に入る際に示し合うポーズもある。

 絵付け師になって50年余りが過ぎた。作業のほとんどを1人でこなす仕事で、障害が大きなハードルになることはなかった。「原動力は何ですか」と尋ねた。大槻さんは「絵が好きです。難しい絵付けに挑戦すると、心が燃えます」と自信に満ちた表情を見せた。

 清水焼や西陣織など京都を代表する伝統産業は今、深刻な危機にある。西陣織工業組合の昨年の加盟企業は約350社。需要減が影響し、最盛期の1975年から千社以上が廃業した。技術の継承が課題となるが、職人の高齢化が進むなど、担い手不足の問題が重くのしかかる。

 こうした中、京都市が今春から取り組む支援事業「伝福連携」に注目が集まる。障害者の法定雇用率をクリアしている府内の企業は918社で、全体の半数ほど。働く意欲のある障害者と後継者を求める伝統産業を橋渡しすることで、双方の課題解決につなげようとの試みだ。

 市の「伝福連携」は、障害者を雇用する企業にバリアフリー工事費や専用器具購入費などを補助する仕組み。京鹿(か)の子絞りの老舗「種田」(下京区)は、その前身となる支援制度を昨年度に活用し、発達障害のある上田倫基さん(30)=中京区=を採用した。

 きっかけは、障害者を対象に開催した絞り体験会。生地を糸でくくりつける作業に没頭する姿に、種田靖夫社長(51)は驚いた。集中力が高く、手先も器用。戦力になると確信した。

 上田さんは過去にホテルやアパレルでの勤務経験があった。しかし、同僚や客とのコミュニケーションがうまくいかず、長続きしなかった。種田社長は「障害があっても、輝く能力を持っている。会社の利益にもつながり、大きく評価したい」と話す。

 市は、種田の事例をモデルケースと位置付け、支援事業のさらなる充実を視野に入れる。市伝統産業課の恵良陽一工芸係長は「伝統産業の活性化と障害者雇用の推進。その両方に資する可能性のある事業だ」と期待を込める。

【 2018年09月01日 11時26分 】

ニュース写真

  • 素焼きした陶器に竹の模様を描く大槻さん。両耳が聞こえないが、絵付けの仕事を50年近く続ける(京都市山科区・京都雲楽窯)
  • 黙々と絞りの作業を行う上田さん。空き時間を見つけては練習に励む(京都市下京区・種田)
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