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万博「大阪のものでなく、世界のもの」京都大大学院の佐野教授

「若い才能が多くのチャンスに恵まれる機会を生かし、積極的に活用すべき」と語る佐野真由子教授(京都市下京区・キャンパスプラザ京都)
「若い才能が多くのチャンスに恵まれる機会を生かし、積極的に活用すべき」と語る佐野真由子教授(京都市下京区・キャンパスプラザ京都)

 55年ぶり2回目となる国際博覧会(万博)の大阪開催が決まり、京都・滋賀でも万博への関心が高まった。市民からは世代を超えて関西の盛り上がりを望む声が上がる一方、京都を訪れる観光客増加に対しては期待と不安も。京大大学院・文化交流史の佐野真由子教授に聞いた。

■「健康長寿」は発想が狭すぎる

 万博は人類の総合的な成果を発信する国際社会の公式イベントで、今後の日本をリードするだろう若い才能が多くのチャンスに恵まれる機会になると期待する。実験的な試みが可能で、大規模な文化イベントは頻繁にあっても、この点で匹敵するものはない。

 1970年大阪万博ではパビリオンのユニホームをデザインしたコシノジュンコさんをはじめ、会場の総合設計を担当した建築家の丹下健三さんの門下生たちも飛躍のきっかけになった。ほかにも多くのクリエーターが万博から育った。

 当時は、西洋と東洋の融合が国際社会の大きな課題だったため、初のアジア開催が新しい時代を刻んだと受け止められた。

 これに比べ、今回は世界史的な意義が薄いと言わざるをえない。私が見るところ、2010年上海万博から始まる「文化多様性時代の万博」の一つという位置付けに現状ではとどまるだろう。万博は大阪のためのものではなく、世界のものだ。計画の具体化にあたっては人類全体への想像力を働かせる必要がある。

 大阪万博の主要テーマである「健康長寿」は先進国の課題であり、食糧難や戦禍の中で生きる人々にまで視野が及んでいない。もっと包括的に、かつシンプルに「命」の大切さを打ち出すなら、文化多様性に代わる次のテーマとなり得たのではないかと思うが、健康長寿では発想が狭すぎる。

 世代間の想像力にも欠ける。40代でも切実さを感じにくいテーマは、この社会の意思決定に関わる年齢層の高さを物語ってもいる。「70年万博を再び」という世代に偏らず、才能の育成のためにも、若い人を十全に活用してこそ、面白さが生まれるはずだ。

 京都にとっては、21年度中に文化庁が全面移転する予定で、文化政策の中心地としての位置付けが根付くだろう時期にあたる。国際的な関心を集める関西において、名実ともに世界的な文化都市として、京都の存在感はより重みを増すのではないか。

【 2018年11月25日 09時10分 】

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