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作文全文:中林静花さん 自閉症の弟と「普通とは何か」問い

『 普通 』  中林静花

 「ガンガン!」

 私の弟が自分のおでこを床に打ちつける音だ。私の弟は自閉症である。弟が自閉症だと分かったのは、2歳のころだ。生後8カ月のころから弟は自分の額を床に打ちつけはじめた。額を衝撃からまもろうと手をさしのべると、あまりの強さに涙が出る程だ。普通の赤ちゃんなら、生後8カ月ごろには、物につかまり歩く。しかし私の弟はハイハイがやっとで、名前を呼んでも目を合わせてくれない。何だか周りと「違う」。私の弟が自閉症だと分かってから、障がい者に対する私の考えが変わった。

 弟が生まれるまで、私は障がい者の方の存在すら知らなかった。障がい者の方を見ても「変わった人だな」くらいにしか思っていなかった。だが自閉症の弟と接していくうちに、なぜ障がい者の方を見て、「変」だと思うのか、普通とは何なのか、と思うようになった。

 「普通とは何か」と聞かれると、答えるのはとても難しい。私にとっての普通とは、自分から見た「当たり前」だと思う。その当たり前は人それぞれで、例えば、勉強が得意な子からすると、テストで90点をとるのが当たり前でも、勉強が不得意な子からすると、テストは50点ぐらいが当たり前だったりもする。私たちが障がい者の方に対して、私たちと「違う」と思うのは、私たちと障がい者の方たちとの普通に、大きな違いがあるからだ。だがこれは悪い違いではなく、良い違いであると私は思う。良い違いを尊重することはとても大事だ。しかし、障がい者を差別するような、悪い違いは、必ず正さなければならない。

 では、私たちには何ができるのか。私の弟は何か難しい課題があった時、「やって」ではなく「手伝って」と私たちに助けを求める。私がその課題をすべて終わらせようとすると、「もういい、手伝い終わり」と言われる。私の弟にも「自分で成し遂げたい」という気持ちがある。私は障がい者の方に対して、やる気や自尊心を失わないように、優しくサポートすることが大事なのではないかと考えた。そして私は障がい者の弟を持つ姉として、障がい者に対する偏見をなくしていきたいと思った。そのためには、障がい者の方と直接会ってみるのが一番良いと思う。障がい者に対する偏見をとりはらって、障がい者の方からお話を聞いたり、障がい者の方を支えている方から障がい者との接し方を教えてもらったりするだけでも、障がい者の方たちを知る良い機会になると思う。

 違いを大切にしながら、相手も大切にできる自分になりたいという気持ちをみんなに持ってほしい。

【 2018年12月22日 19時50分 】

岸田繁 交響曲第一番・第二番 連続演奏会 2019.10.5

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