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和装業の独特商慣習見直し進む はれのひ成人式トラブルから1年

華やかな振り袖が並ぶ売り場。はれのひ問題から1年がたち、和装業界の商慣行のさらなる改善に注目が集まっている(京都市下京区・ゑり善京都本店)
華やかな振り袖が並ぶ売り場。はれのひ問題から1年がたち、和装業界の商慣行のさらなる改善に注目が集まっている(京都市下京区・ゑり善京都本店)

 振り袖の販売・レンタル業「はれのひ」(破産)が成人の日に起こした晴れ着のトラブルから1年がたった。和装業界のイメージを悪化させかねない問題だけに、着物の一大集散地である京都では商慣行を見直そうとする機運が高まった。和装需要が低迷する中、消費者目線の商いを定着できるかが注目されている。

 「成人式に着物を着る人が減るのではないかと心配したが、思ったより影響は少なかった」

 京都に本拠地を置く着物小売店グループの関係者は胸をなで下ろした。

 振り袖市場はレンタル着物の普及と人口減少で縮小傾向にある。昨年も一部の大手小売りや問屋が減収だった中で、売り上げを伸ばした業者もあった。和装小売最大手やまと(東京)は昨年4~12月の売上高が前年同期比7%増え、京都高島屋(京都市下京区)も昨年1年間で約1割増えた。老舗呉服店ゑり善(同)も新規顧客が増えて好調だったといい、業界内で明暗が分かれた。複数の業界関係者は、はれのひ問題の反動で「消費者が大手や老舗などを中心に慎重に店を選ぶ傾向がより強まった」と口をそろえる。

 資金繰りに窮し、成人の日を前に突然営業を放棄したはれのひ。無責任な経営に批判が集まったが、問題の背景の一つとして光が当たったのが、和装業界に根付く特殊な商取引だった。

 業界には支払い期日が長期の手形のほか、在庫を抱えたくない小売店や問屋が商品を買い取らずに借りて売る委託販売が慣習として残る。事業リスクを回避するこうした取引が、結果的に消費者を蔑ろにしているとの指摘もある。経済産業省の和装振興協議会商慣行分科会で座長を務める矢嶋孝敏やまと会長は「資金や信用がなくても商売でき、成長できるような着物業界固有の商慣行のツケが、消費者に回ってしまった」とみる。

 昨年のはれのひ問題で、生涯一度の晴れ着姿を楽しみにしていた新成人や家族の無念が大きく報道されたことで、和装業界は改革を加速させた。小売り、流通、産地の業界4団体は商慣行の改善を話し合う協議会を設置。昨年9月に京都で開いた「きものサミット」では、不適切な業者との取引を自粛する指針が採択された。京都織物卸商業組合の野瀬兼治郎理事長は「業界のモラルをただすのが重要だ」と強調する。

 京都でも昨年末、西陣織工業組合と京都織商、西陣織物産地問屋協同組合が定期的な会合を発足させた。今後は口頭が主流だった契約の書面化を推進する予定だ。発注者が代金を一方的に値引きする慣行などは、まだ一部ではあるが、見直す業者も出てきた。全国の小売店でつくる日本きものシステム協同組合(下京区)の佐々木英典理事長は「産地と消費者の保護につながる商慣行の改善なくして業界は成り立たない。今年はどう具体化するかが問われる」と気を引き締める。

 和装業者には、もう一つの懸念材料がある。2022年度に予定される成人年齢の18歳への引き下げだ。大学受験や就職を控えた18歳の時期に成人式を開くとなれば、振り袖需要が落ち込む恐れもあるからだ。

 業界は「20歳での成人式は日本に根付いた文化」(奥山功・日本きもの連盟会長)と主張。京都市は20歳での式典継続を決めたが、大半の自治体は未定で、国や各自治体に20歳での式典開催を要望していくという。

 多くの若者が華やかな晴れ着をまとう成人式は、和装に親しむ入り口でもある。「成人」の定義変更で式典自体の行方が不透明になる中、健全で持続可能なビジネスモデルをどう築くのか、業界の知恵と本気度が問われている。

【 2019年01月12日 10時30分 】

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