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子連れ出勤OK、職場多様化 社長自ら育休取得も

土本さんのデスクのすぐ後ろで遊ぶ莉央ちゃん(京都市下京区・ウエダ本社)
土本さんのデスクのすぐ後ろで遊ぶ莉央ちゃん(京都市下京区・ウエダ本社)

 床に敷かれたマットにままごとセットやおもちゃが並ぶ。母親の膝に座って郵便物の仕分けを眺めていた女の子が、オフィス内をよちよち歩いて手紙などを届けて回った。周囲の人たちからは自然と笑みがこぼれる。

 事務機器総合商社のウエダ本社(京都市下京区)。土本由香さん(42)は月に数回、長女の莉央ちゃん(2)とともに出勤する。普段は保育園に通わせるが、病気などで受け入れてもらえない時に連れてくる。

病気なら休むしかなかった。 同僚の支えが安心感に

 同社に、子連れ出勤の制度はなかった。発端は昨年8月、莉央ちゃんが結膜炎にかかったことだ。保育園には行けず会社を休むしかなかったが、当時は忙しい決算期。電話で相談した上司の長谷川智さん(47)は「連れておいでよ」と背中を押した。社長不在で、現場独自の判断だった。土本さんは「出社してもしなくても迷惑をかける。そもそも子連れで仕事に集中できるのか」と不安を覚えたが、思い切って出社を決めた。

 同僚が遊び道具としてノートやクレヨンを用意し、温かく迎えてくれた。長谷川さんは「大きな会社ではないので、1人欠けるだけで仕事が回らないことがある。100パーセントではなくても、出てくれればみんなが助かる」と話す。土本さんは「子連れ出勤の申し訳なさは正直ある。でも支えてくれるみんなの気持ちが伝わって安心感がある」と感謝する。

 保育園が足りずに職場復帰できない人は多く、2016年には「保育園落ちた-」のブログから社会問題になった。なんとか入園できても、病児保育施設が足りないため、子の病気や体調不良で欠勤を繰り返さざるを得ない保護者も多い。育児出勤を認める会社はまだ少数派だ。

 もちろん、育児は女性だけの役割ではない。レンタルサーバー事業などを手掛ける「フューチャースピリッツ」(下京区)の社長、谷孝(たにたか)大さん(41)は、三男の心湊(みなと)ちゃんが生まれた昨年11月から3カ月の予定で育児休業を取っている。

 同社では有給休暇を利用して1週間ほど休んだ男性社員がいただけで、本格的に取得した男性はいない。「制度があるからどうぞ、と言っても取りづらさはあるかもしれない。自分が率先して経験を伝えたい」と谷孝さんは話す。

 バリバリ家事をして、空いた時間に会社の中期的な構想を練る-。谷孝さんはそう夢想していたが、「そんな余裕はない」と苦笑する。しかし、かけがえのない時間を子とともに過ごし、充実した毎日を送っているという。

 男性の育児休業取得率はまだまだ低い。厚生労働省の17年度調査によると、女性の83・2%に対して男性は5・14%にとどまる。前年度比1・98ポイント上昇はしているが、20年までに13%という目標にはほど遠い。

 次の時代、誰もが働きやすい社会は実現するのだろうか。労働や育児の価値観が変わりつつある中、現場では模索が続いている。

      ◇

 2019年が幕を開けた。今年は改元で新しい時代を迎える。急速に進む少子高齢化や国際化、情報技術革命。ポスト平成の世の中は、どのような風景が広がるのか。旧来の価値観が大きく揺らぐ中、多彩な生き方を追い求める人々を訪ねた。

【 2019年01月23日 18時20分 】

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