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社説:ダウンロード 罰則拡大は萎縮を生む

 「海賊版」と知りながらインターネットから写真や文章など全ての著作物をダウンロードすれば、罰せられる-。

 著作権法改正の方針を、文化審議会の小委員会が大筋で了承した。文化庁は刑事罰を盛り込んだ改正案を開会中の国会に提出する意向だ。しかし、違法ダウンロードが犯罪となれば、ネット利用の萎縮につながりかねない。

 委員の中から慎重意見が相次ぎ、予定された最終報告書案のとりまとめは先送りされた。罰則の範囲が焦点になるようだが、さらに議論を重ねるべきではないか。

 ダウンロードは日常的に行われ、何が海賊版か分からないケースも少なくない。罰則が設けられると一般利用者にも及び、影響は大きい。なのに小委員会の議論は昨年10月からわずか5回。拙速といわざるを得ない。

 著作権を守る重要性は言うまでもない。とはいえ、海賊版排除のために、罰則の網を著作物全体に広げるのは、乱暴ではないか。ネット利用の良さを損ないかねない。角を矯めて牛を殺すようなことはあってはならない。

 海賊版の動画、音楽のダウンロードには、すでに2年以下の懲役か200万円以下の罰金などの罰則がある。それを静止画やテキストなどに対象範囲を広げ、同様の罰則を加えるものだ。

 漫画の海賊版が氾濫し、巨額の経済的被害が出ている現状がある。そこで、海賊版サイトへのネット接続を遮断する制度の導入が検討されたが、憲法の「通信の秘密」に触れると反発があり断念。その代わりに急きょ出されたのが、静止画など対象の拡大だ。

 違法となるのは、海賊版サイトから利益目的で作品丸ごと、反復継続してダウンロードする場合-に限定する方向という。しかし、小委員会では「私生活を幅広く規制する」などの意見が相次ぎ、最終報告書案の一部修正が検討されている。

 「日本マンガ学会」(竹宮惠子会長)は先週、反対声明を出している。図版などのダウンロードが違法になれば「創作の萎縮を招く」と懸念を示し、「新たな著作物を創造する<生産行為>でもありうる点が考慮されていない」とした。

 法改正しても海賊版摘発は難しく、実効性は疑問だ。ただ、抑止力にはなりうる。それではネットを自由に使って知見を共有し、新しい発想を見いだす可能性を狭めかねない。ここは罰則ではない知恵の出しどころではないか。

【 2019年01月30日 11時30分 】

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