出版案内
福祉事業団
京都新聞AR

「私は心も体も女です」トップ当選したLGBT市議、決意の涙

自転車で街中を走り、支持を訴える赤坂さん(25日夕、亀岡市・亀岡駅前)
自転車で街中を走り、支持を訴える赤坂さん(25日夕、亀岡市・亀岡駅前)

 京都府亀岡市議選で、LGBT(性的少数者)の政治家が誕生した。LGBTを公表した地方議員は府内で2人目になるといい、有権者の意識が変わりつつあると言える。当事者からは「LGBTが理由で偏見や人間関係に苦しむ人たちの励みになる」と期待の声も上がる。

■差別的な言葉「へこたれない」

 1月27日に投開票された亀岡市議選の結果、男性から女性へ性別変更した赤坂マリアさん(48)が初当選した。幼少期から自身が男性であることに疑問を持ち、27歳で性別適合手術を受けた。大阪でショーハウスを経営し、タレントとして活動後、10年前、祖父母の介護で亀岡市に移り住んだ。

 1年前、介護の経験から「高齢者が楽しめるまちに変えたい」と立候補を決意。ここで戸籍の壁が立ちはだかる。「周りに何を言われようが私は女性。戸籍は関係がない」と思っていたが、市選挙管理委員会は戸籍に基づき、候補の性別を公表することを知った。

 性的少数者が世間に十分、理解されていないことは自覚していた。戸籍が男性のままだと支援者まで心ない言葉を掛けられるのではないか。悩んだ末、家庭裁判所に性別変更を申請、昨年10月、認められた。

 選挙は自転車で回った。7日間の走行距離は約400キロ。走っていると、差別的な言葉を浴びせられたこともあった。決まって「私は心も体も女です」と笑顔で返した。「長年、言われ続けた。そんなことではへこたれない」と笑う。

 支援者は街頭で「男性で生まれ、女性になったマリアは両方の気持ちが分かる」と訴え、性別変更を強みに変えた。移住後に取り組んだ、高齢者向け住宅の経営やがん予防運動といった地域活動が、支援の輪を広げた。

 投票日が近づくと「有権者が自分の生き方を認めるのか」との不安もよぎった。結果は、2270票のトップ。2位の候補に450票以上の差をつけていた。

■「性で悩み、苦しむ人のバリケードに」

 当選判明後の27日夜、事務所に駆けつけると、集まった約60人の支援者から「マリア」コールで迎えられた。赤坂さんは「新しい亀岡のスタートになる日。自分の性で悩み、苦しむ人のバリケードになる。苦労した私だからこそ、政治の現場で、できることがある」と涙ぐんだ。

 LGBT自治体議員連盟世話人の前田邦博・東京都文京区議は「有権者の反応を気にして、公表できない議員も多く、特に地方ではその傾向は強い。地方都市で当選者が出た影響は大きい」と高く評価した。

 ジェンダー論に詳しい佐伯順子同志社大社会学部教授(メディア学)は「日本の制度は戦前の家族制度、男女の婚姻関係に基づいて成り立ち、LGBTの人は不自由を強いられている。制度を変えるには政治の力が必要で、苦しんだ政治家への期待は大きい。まだ性的指向で人格まで判断する風潮は根強く、多様な生き方を許容する社会に向け、有権者の意識も変わらなければならない」と語った。

■LGBT公表、議員活動の幅に広がり

 京都府長岡京市議の小原明大さん(41)は2017年12月、男性同性愛者であることを表明した。公表から約1年が経過し、現在の状況を聞いた。

       ◇     ◇

 「隠して当たり前」という現状を変えたかった。公表後も支援者が離れたことはなく、逆にLGBTの人から相談を受ける機会が増え、議員活動の幅は広がった。

 同性カップルに証明書を発行する同性パートナーシップ制度の導入を市に促したこともあるが、実現していない。当事者以外から声が広がらないと難しいという壁もある。

 ただ、LGBTの政治家が誕生したのは歓迎したい。政治家は人気商売で、偏見を持たれる要素は回避しようとする。この風潮が続けば住民も公表しようという社会にならない。公表した当選者が増えれば、世間に理解が進んだという一つの指標になり、当事者の励みにもなる。

【 2019年02月06日 10時41分 】

ニュース写真

  • 自転車で街中を走り、支持を訴える赤坂さん(25日夕、亀岡市・亀岡駅前)
  • 同性愛者であることを公表して議員活動を続ける小原長岡京市議(長岡京市役所)
京都新聞デジタル版のご案内

    地域のニュース

    全国のニュース