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社説:大阪「ダブル選」 住民不在の奇策またも

 選挙の役割を、あまりに軽く考えてはいないだろうか。

 松井一郎大阪府知事と吉村洋文大阪市長がともに辞職し、ポストを入れ替わって4月の知事・市長選に立候補する意向だという。

 両氏が目指す「大阪都構想」の実現をその理由に掲げている。

 地域にとって重要な政策遂行が行き詰まった場合、有権者に信を問う選択肢はありえよう。

 だが今回の辞職表明は、公明党が都構想の法定協議会で反対する方針を固めたことへの対抗措置のようにもみえる。両氏が率いる地域政党・大阪維新の会は府市両議会で過半数を持たず、公明の賛同を頼みとしていたためだ。

 議会との間で妥協点を探る努力は十分だったのか。多数派工作の不調を選挙で解決しようとの姿勢に、大義があるとは思えない。考え直すべきではないか。

 知事・市長を入れ替わるやり方は奇策としか言いようがない。通常の出直し選なら当選しても11、12月に任期満了を迎え、再び選挙となる。2度の選挙で多額の経費がかかるとの批判をかわすための入れ替わり策なのだろう。

 新ポストに就けば4年間の任期が生じる。長い任期を得るのが目的なら自己都合というしかない。

 両氏とも3年余り前、有権者の負託を受け、知事、市長に就任したはずだ。任期途中で互いの職を交換すると言いだすのは、府民、市民に対して無責任すぎる。

 政党も政策も同じだからポストを代わっても構わないと考えているなら、知事・市長の存在意義を自ら軽んじているようなものだ。

 知事と市長の役割は異なり、職責は広い。選挙に臨むのなら、府市政の課題について十分な展望を示さなくてはならない。都構想という1テーマで信を問うといわれても有権者は戸惑うだけだろう。

 選挙を仕掛けて局面転換を図る手法には既視感がある。かつて維新を率いた橋下徹氏は知事から大阪市長に転身。任期途中の出直し市長選でも当選した。

 こうした経験が、選挙に勝ちさえすれば政治的な正当性を得られるとの一面的な思い込みを生み、今回の「ダブル選」表明につながってはいないか。

 大阪都構想は2015年の住民投票で否決されている。改めて実現させたいなら、この時以上に、必要性やメリットを粘り強く府市民や議会に説く作業が必要だ。

 それを飛び越え、選挙で一気に決着させようというなら、住民不在と批判されても仕方ない。

【 2019年03月07日 12時10分 】

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