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容疑者、社会から孤立か 京アニ放火殺人、依然重篤で聴取できず

青葉容疑者を巡る経緯
青葉容疑者を巡る経緯

 69人の死傷者を出した京都市伏見区の「京都アニメーション」(京アニ)第1スタジオ放火殺人事件は、18日で発生から1カ月。殺人などの疑いで逮捕状が出ている青葉真司容疑者(41)=さいたま市見沼区=は重度のやけどで集中治療を受けており、京都府警が聴取できない状況が続く。「死ね」と叫んでガソリンに火を付けた男の心の奥底は見えないままだが、青葉容疑者を知る関係者を取材すると、交友関係が狭く社会から孤立気味に生活する容疑者の人物像が浮かび上がる。不可解な近隣トラブルを繰り返すなど、精神的に不安定な一面も垣間見える。

■事件直前トラブル、過去にも

 「殺されるかと思った」。青葉容疑者の自宅アパートの隣室に住む男性(27)は、おびえた様子で振り返る。普段から交流はなく、夜になると、部屋から頻繁に音楽や振動音が鳴り響いていたという。トラブルが起きたのは7月14日。青葉容疑者が突然、自室で大きな叫び声を出し、男性の玄関ドアをたたいてきた。男性が不審に思って青葉容疑者の部屋を訪ねると、胸ぐらをつかまれ、髪を引っ張られた。男性は「彼はいきなり『殺すぞ。自分には失う物はない』と迫ってきた。本当に怖かった」と話した。青葉容疑者はトラブルの翌日に新幹線で京都入りし、その3日後に事件は起きた。

 青葉容疑者はさいたま市緑区で少年時代を過ごした。小学校の同級生だった女性(41)は「どこにでもいるような男の子。あまり印象に残っていない」。知人によると、両親は小学校低学年のころに離婚し、父と兄、妹の4人で暮らしていた。生活は苦しそうで、中学進学後は欠席がちになったという。父方の親族は「(青葉容疑者とは)一度も会ったことがない。どう生活していたのか分からない」と話した。

■非正規、職を転々

 青葉容疑者を知る複数の関係者によると、青葉容疑者は同市浦和区の定時制公立高を卒業し、コンビニのアルバイト店員など非正規の仕事を転々とした。その後、リーマンショックなどの影響で「派遣切り」に遭い、2008年12月に行き着いたのが茨城県常総市の雇用促進住宅だった。

 同住宅の管理人男性(70)は、青葉容疑者をはっきりと覚えていた。当時、職をなくした人から次々と入居申し込みがあり、青葉容疑者もその一人だった。家賃約3万円は未納続きで、催促に何度か部屋を訪ねたことがあった。青葉容疑者は一度だけ、ドアを半開きにして応じた。「支払いはどうするんだ」と問いかけたが、黙りこくっていたという。

■壁に20センチの穴

 異変が起きたのは、入居から約3年半後の12年6月19日。近隣住民から「夜中にガラスが割れたり、壁をぶち破ったりするような音が聞こえた」と連絡があり、男性は警察とともに青葉容疑者の部屋に入った。室内の光景に息をのんだ。壁にはハンマーで壊されたとみられる直径20センチほどの穴が二つ。画面の割れたノートパソコンなどが散乱していた。青葉容疑者の姿はなく、このトラブルの翌日、青葉容疑者は県内のコンビニで強盗事件を起こし、逮捕された。

 青葉容疑者は12年9月、懲役3年6月の実刑判決を受けた。裁判記録によると、犯行動機について「仕事上で理不尽な扱いを受けるなどして、社会で暮らしていくことに嫌気が差した」と供述している。16年初めに刑務所を出所後、さいたま市浦和区の更生保護施設で一時居住し、同年7月に現在のアパートに移り住んだ。

 府警は先月26日にアパートを捜索し、京アニ関連グッズなどを押収。室内は物が散らかり、破壊された大型スピーカーもあった。

 事件直前に不可解なトラブルを起こすのは、京アニ放火殺人事件とコンビニ強盗の双方に共通する。京都入り直前の心理状態が、事件に何らかの影響を及ぼした可能性はあるのか。蘇生会総合病院(京都市伏見区)精神科の東徹医師は「現状では、青葉容疑者に関する情報が足りず、当時の心理状態について判断することはできない。なぜ事件を起こしたのか、青葉容疑者自身の言葉で語ってもらいたい」と語る。

【 2019年08月18日 17時50分 】

ニュース写真

  • 青葉容疑者を巡る経緯
  • 青葉容疑者の自宅アパートの家宅捜索で、一部が壊れた大型スピーカーを運び出す京都府警の捜査員(7月26日、さいたま市見沼区)
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