ARTS&EVENTS[ことしるべ]を編集する京都新聞COMの新入社員が、研修中に展覧会を鑑賞しました。その中から作品を各1点選んでご紹介します。
■西洋絵画400年の旅-珠玉の東京美術館コレクション
ギュスターヴ・クールベ《水平線上のスコール》1872-73年 東京富士美術館蔵 【通期展示】
暗雲立ち込める空の下、大波が飛沫をあげて押し寄せる様を描いたこの絵画は、ずっと見つめていると、自身まで荒波に飲み込まれそうな恐怖感すら感じさせます。厚く塗り重ねられた重い雲や黒々とした大海原に用いられた暗色で統一された全体の画面とは対照的に、白く眩しい水飛沫がひときわ目立ち、まるで音を上げて跳ねるよう。ペイントナイフにより表現された光と影のコントラストが大波を立体物として浮き上がらせ、来場客を引き付けます。大波を引き立てる背景の描写にもぜひ注目してください。(新入社員A)
■日本画アヴァンギャルド KYOTO 1948-1970
秋野不矩《砂上》1936年 京都市美術館蔵 【通期展示】
入口から入って右手を向くと、すぐに目に入るこの作品。画面はタイトルの通り、白い砂で一面覆われています。右奥では三人の浅黒い肌をさらけ出した裸の子供が砂遊びをしており、手前では母親らしき人物が横たわって、子供たちの様子を見つめています。この情報だけだと、休日に海辺に遊びに来た家族の穏やかな一ページに思えますが、そうではないのがこの作品の面白いところです。子供たちは砂に触れて何かしら行っているものの、どこか心ここにあらずといったようすで、それぞれが内に閉じこもっているような陰鬱さをまとっています。真っ白な砂浜と浅黒い肌のコントラストがそれをいっそう強調させます。その違和感が強烈に頭に残る作品でした。(新入社員B)
■日本画アヴァンギャルド KYOTO 1948-1970
山崎隆《蹟》1935~1965年代 【通期展示】
日本画とは、さっぱりしていて、奥行きがなく、どことなく平坦で、落ち着いた色味で……といった印象はないでしょうか。現在、京都市京セラ美術館「日本画アヴァンギャルド KYOTO 1948-1970」で展示されている、山崎隆氏による『蹟』は、そのようなバイアスをことごとく塗り替えます。粒だった絵の具の赤と、かすかに見える青、黒。まるで目のように、岩のように、円を描いている白。横から見ると顕著ですが、額にはめこまれた板から今にも動きそうなほど絵の具が隆起し、全体としてゴツゴツした印象を与えています。インターネットで調べれば、ある程度作品を自宅で見られる現代でも、このような作品の息遣いは、やはり実際に足を運ばないとわからないものでしょう。(新入社員C)
■日本画アヴァンギャルド KYOTO 1948-1970
三上誠《灸点万華鏡1》1966年 福井県立美術館蔵 【後期展示】
本展の中で、最も気に入った作品は三上誠の「灸点万華鏡1」です。この作品は三上が晩年に手掛けた「灸点」をテーマにしたもので、人体をめぐる灸点と万物に広がる宇宙のことわりが表現されています。この作品の魅力は、幾何学的でありながらも温かみを感じる点にあると考えます。画面に描かれている大小の丸や矢印といった図形は迷いのない整った線で描かれており、非常に幾何学的で無機的な印象を受けます。その一方で、上部の大きな円の中心部から広がるように黄色や橙色が塗られており、太陽光のようなエネルギッシュな印象を与えています。この矛盾さがこの作品を印象的なものに仕立て上げています。(新入社員D)