近代美術を語るとき、話題として欠かせないのが、展覧会で世に華々しく発表された大作の数々です。
作家が自らの芸術的信念を形にするべく技巧を尽くして挑んだ展覧会出品作は、新時代の表現を切り開いてきました。
進取の精神を尊んだ住友家当主も、それに理解を示して買い集めています。
しかし、それだけが住友の近代美術の特色ではありません。
むしろ、そうではない別の在り様を示す作品も集めたことこそ、大きな魅力になっています。
重要文化財 板谷波山《葆光彩磁珍果文花瓶》 大正6年(1917) 泉屋博古館東京
たとえば、来客をもてなしたり、ハレの日を彩ったり、使用する場面をイメージしながら注文された作品。
住友家当主の美意識に応える作家たちの静かな挑戦に、見る者の心は揺れます。
あるいは同じ趣味を持った仲間との交流のなかで生み出された作品。
とくに住友コレクションでは、江戸時代から続く文人趣味の土壌に育まれた作品が目立ち、作品からは同好の士が通じ合ったときの居心地の良い空気が漂います。
富田范溪《鰻籠》 大正3年(1914) 泉屋博古館東京
こうした多彩な魅力を持ち合わせるコレクションから、何度でもみなさまにご覧いただきたい作品、今このタイミングだからご紹介したい作品を選び抜いて展示いたします。