京都市京セラ美術館で開催の「松本市美術館所蔵 草間彌生 版画の世界ー反復と増殖-」の見どころを紹介します。

■見どころ
草間彌生、初の大規模版画展! 松本市美術館から約330点が京都に集結!
作品を全点入れ替える展示替えを行うのは京都会場だけ!
初めての版画作品から、近年の「愛はとこしえ」シリーズまでを一挙紹介!

■展示構成
Ⅰ わたしのお気に入り
1929年、草間彌生は長野県松本市で種苗業を営む旧家に生まれます。草間は花園に囲まれた少女期を過ごし、スケッチをするのが日課となっていました。その類いまれな観察眼とデッサン力でいつしか世界を舞台に闘うことを決意します。
1957年、28歳で単身渡米。網目、水玉といった独自のイメージを確立し、約16年間、ニューヨークを中心に創作活動を行います。しかし、体調や心の不調を感じ、1973年に帰国。この時期の作品には、苦しい胸のうちを反映するように、「死」を想起させるものが多く存在します。版画作品が登場したのもその頃からです。
版画作品には、死や苦悩を前面に押し出した作品とは対極にあるような華やかなモチーフが色彩ゆたかに表現され、生命力に満ちています。

Ⅱ 輝きの世界
草間は渡米後、1959年に発表した網目でキャンバスを覆いつくす絵画「無限の網(ネット・ペインティン グ)」シリーズによって、画家として鮮烈なデビューを飾ります。そして、1965年頃からは、電飾と鏡を用いた立体作品の制作を始めました。「ミラールーム」に代表される光の彫刻作品です。合わせ鏡によって明滅しながらどこまでも増殖する光(水玉)は、草間の永遠なるイメージを代弁しているようです。その輝きの世界は版画作品にも見ることができます。「無限の網」は、心の中のイメージと視覚的、体感的な経験の堆積を整理し、極々シンプルなかたちへ集約したものと言えます。故郷・松本のせせらぎ、渡米時に飛行機の窓から見た太平洋の揺らめきもその要素になっています。版画作品のラメの粒子による瞬きはそれらの記憶と通底しているのかもしれません。

III 愛すべき南瓜たち
草間彌生は植物に囲まれて育ちます。家の周りに広がる畑に出かけてはスケッチをする少女時代を過ごします。特にお気に入りは南瓜。その太っ腹で愛らしい姿に惹かれ、幾度も幾度も描いてきました。時を経て、心の葛藤を自己分析によって昇華させた水玉や網目が、草間の幼少期の記憶にあった植物たちと結びつきます。南瓜など身近なモチーフが水玉を纏(まと)うことで鑑賞者は草間彌生の表現に寄り添いやすくなったのかもしれません。鑑賞者と草間の心をつないだ南瓜は、今なお草間芸術の代表的なイメージとして君臨し続けています。

IV 境界なきイメージ
草間は、キャンバスや彫刻作品、さらには空間全体を水玉や網目など同じパターンで覆いつくすことで、 自身の中から浮かび上がるイメージは無限であることを高らかに宣言してきました。幼少期から共存を強いられた得体の知れない内的イメージを、草間は芸術によって自らの個性に昇華させることに成功します。 それは葛藤と分析を繰り返し、永い闘いの末に手に入れた成果でもありました。 常同反復によるイメージの増殖が創作活動の根幹にあった草間と、複製芸術である版画の出合いは必然だったのかもしれません。それまでの画面上、または同一空間でのイメージの増殖であったものが、版画作品の登場により、草間自身の手を離れた増殖を可能としたと言えるでしょう。

V 単色のメッセージ
シルクスクリーン、リトグラフは草間彌生の原画をもとに刷師が版を作成していますが、本章で紹介するエッチングの作品では、草間自身が銅板に線を描いているため、より直接的なイメージの再現ができていると言えるかもしれません。指先のわずかな振幅や強弱さえも版に刻まれ、それをあえて補正せずに刷り上げられています。小さな銅板にギリギリとねじ込んだ草間のイメージは、色彩のない単色の表現によって、より鮮明に浮かび上がります。 振り返れば、草間芸術の大きな転機にはいつもモノクロームの作品が誕生してきました。新たな表現領域に踏み込むにあたり、まず形状を徹底的に突き詰め、湧き上がって来るイメージを完全にその手中に捉えた後、色彩が溢れ出してきます。土台としてのフォルムが揺るがないからこそ、草間の色彩は天高く舞い上がることができるのでしょう。

VI 愛はとこしえ
「愛はとこしえ」は2004年から約4年をかけて制作されたシリーズで、黒色のマーカーペンで100号のキャンバスに描いた 50点を原画としたシルクスクリーン作品です。顔や目、植物など具体的なモチーフが前面に押し出され、草間芸術の深遠性を知らしめます。帰国後の版画作品によって、つなぎ留められた記憶は、「愛はとこしえ」によって表出しました。それは、かつて幼少期を過ごした故郷・松本の花園で想像した数多のイメージで、脈々と草間の中に息づいていた大切な記憶であったのかもしれません。 本シリーズは、その後のアクリル画「わが永遠の魂」シリーズへと繋がり、最新シリーズ「毎日愛について祈っている」へ発展を続ける近年の躍進の起点となった作品でもあります。

■草間彌生プロフィール
前衛芸術家、小説家。1929年、長野県松本市に生まれる。 幼少期より水玉や網目を描く。1957年に渡米、ニューヨークを拠点にネット・ペインティング、ソフト・スカルプチャー、鏡や電飾を用いた革新的なインスタレーション作品を発表。さらにボディ・ペインティング、ハプニング、ファッション・ショー、映画など多様な表現を欧米で展開する。1973年に帰国、活動拠点を東京に移し、美術制作に加え、詩や小説の文筆活動も行う。野外彫刻や企業とのコラボレーション、ドキュメンタリー映像などを通じて幅広い世代に知られるようになる。 世界各地の美術館で大規模な展覧会が開催され、2016年文化勲章受章。2017年、草間彌生美術館を東京都新宿区に開館。 代表作に「無限の網」、「無限の鏡の間」、「水玉強 迫」、「南瓜」、「わが永遠の魂」シリーズなど。現在も精力的に制作を続ける。

■音声ガイド
音声ガイドでは、草間彌生本人の肉声を特別収録。 自作の詩の朗読、詩に自らの曲をつけ歌うトラックなど、充実の内容です。 声優の羽多野渉さんのナレーションとともに、草間ワールドを耳から体感してみてください。
◆ナレーション 声優 羽多野 渉 Wataru Hatano
長野県出身。81プロデュース所属。 おもな出演作にNHKEテレ「ニャンちゅう!宇宙!放送チュー!」(ニャンちゅう役)、「呪術廻戦 渋谷事変」(重面春太役)、「キャプテン翼」(松山光役)、「僕のヒーローアカデミア」(心操人使役) など。声優としてだけでなくアーティストとしても活動中。
▼会場レンタル版
展覧会会場入口にて、専用ガイド機を気軽にレンタルできます。
貸出料金:お一人様1台 650円(税込)
▼アプリ配信版(iOS/Android)「聴く美術」
配信期間中は、いつでもどこでも何度でも視聴可能。
販売価格:650円(税込)
配信期間:2024年9月27日(金)~展覧会開催期間中を予定