「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
5月のオススメはこちら!
新疆ウイグル自治区から現れた驚異の映像詩人、鮮烈のデビュー作。
中国西北部の新疆の草原を舞台に、自然との対話、記憶の循環、そして成長の瞬間を静かに描き出した『ボタニスト 植物を愛する少年』を紹介します。
夢と現実の境界を揺らしながら、自然や精霊との静かな対話が作品全体に広がる、北京電影学院出身の新鋭ジン・イー監督の長編デビュー作です。
現代中国のアートハウス映画を代表するビー・ガン監督(『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』)がアドバイザーとして参加しています。
新疆北部の草原地帯にある静かな村。広大な草原と澄んだ空のもとで暮らす、カザフ族の少年アルシンは、周囲から少し距離をとりながら、草花の名前を覚え、葉のささやきに耳を澄ますことに日々の時間を費やしています。
彼にとって、植物は単なる自然ではなく、失踪した叔父から教わった世界観そのものでした。
そんなある日、彼の静かな生活に変化が訪れます。村にやってきた漢民族の少女メイユーの存在です。
ふたりは、一緒に草原を歩き、植物を探し、緩やかで暖かな日々を過ごしていきます。
やがて、ふたりは“初恋”とも呼べる距離へ移り変わっていきますが、夏の終わりとともにメイユーは上海へ転校することが決まり…。
詩を語る馬、根を離れて歩き出す木、祖先の記憶を宿すかのような植物。
現実と幻想が静かに交錯するなかで、アルシンが抱える孤独と、メイユーに出会って見つける心の繋がり、そして喪失と断絶、それでも生き延びていくものを瑞々しい映像で綴ります。
映像に映る陽光はとても温かく、まるでその光をわたしたちも浴びているかのような気持ちにさせられます。一方、一見シンプルな淡い恋物語に見えますが、廃校になった黒板に薄く残るカザフ語の文字、その上に上書きされた中国語の文字など、のどかな地へ忍び寄る近代化と置き去り、文化支配、そして変化し移ろうことで生き延びていく“文化”が密かに描きこまれていることも忘れられません。
あっと驚く劇的な展開はありませんが、劇場でゆったり腰を落ち着けて鑑賞するのにうってつけの一作となっています。
執筆:川添結生(京都シネマ)
5月22日(金)公開
ボタニスト 植物を愛する少年
(原題)植物学家
2025/中国/96分
監督:ジン・イー
出演:イェスル・ジャセレフ、レン・ズーハン
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【上映スケジュール】
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