2026年4月18日(土)から6月14日(日)まで、京都市下京区にある龍谷大学 龍谷ミュージアムで春季特別展「京都・真如堂の名宝」が開催されています。開催に先立ち、4月17日(金)に内覧会が行われました。

本展覧会は、京都・洛東に伽藍(がらん)を構える真正極楽寺 真如堂をテーマとした初の展覧会です。真如堂に伝わる仏像や仏画、経典、近代絵画、そして創建当時の都近辺の木彫像を含めて約100件が展示されています。真如堂は平安時代に戒算上人が開いた天台宗の古刹(こさつ)で、戒算上人の出自や、創建当時の動向など不明な点も多く残されています。本展は、真如堂の仏像や絵画、文書などの調査・検証の成果を公表する機会にもなっています。

ここからは、展覧会の見どころを章ごとに紹介します。

第一章 真如堂の創建と「うなずきの弥陀」

第一章では、真如堂の創建および本尊について概観する内容となっています。見どころは「真如堂縁起」です。真如堂の本尊である阿弥陀如来立像は、比叡山の慈覚大師円仁の作であると伝えられています。「真如堂縁起」では円仁が中国から帰国し、自ら阿弥陀如来立像を彫刻する場面が描かれています。展示されている絵巻の近くには、描かれている場面を説明するキャプションが添えられており、真如堂の本尊にまつわる歴史を容易に理解することができます。絵巻の内容もさることながら、鮮やかな色彩にも注目です。

重要文化財 真如堂縁起 巻上 絵:掃部助久国筆 詞:後柏原天皇(1464~1526年)宸翰 室町・1524(大永4)年 真正極楽寺 真如堂 【巻上 展示期間:4月18日~5月17日 ※巻替えあり】

第二章 真如堂に伝わった仏教美術の精華

第二章では、平安時代から現在まで真如堂に伝わるさまざまな仏教美術が展示されています。本展覧会の目玉は、真如堂山内寺院法輪院伝来の阿弥陀如来立像です。近年の調査によって、像内に仏師「院蓮」の名と制作年の墨書銘が発見されました。以前は慶派の作と考えられてきましたが、新たな発見により院派仏師の作であることが判明し、当時、院派と慶派の作風が接近していたことを示しています。
 



木造 阿弥陀如来立像 院蓮作 鎌倉・1253(建長5)年 真正極楽寺 真如堂一山 法輪院

また、実際に会場で鑑賞してほしい作品が「刺繍釈迦三尊来迎図」です。名称の通り刺しゅうで釈迦三尊が表現されています。糸で表現されているとは思えないほどに繊細な作品の魅力は写真では伝えきれません。ぜひ会場で実物を鑑賞してみてください。
 



刺繡 釈迦三尊来迎図 鎌倉~南北朝時代 14世紀 真正極楽寺 真如堂 【展示期間:4月18日~5月17日】

普段、真如堂に安置されている際には見ることのできない角度から仏像を鑑賞できる点も本展の魅力です。横や後方から仏像を見る機会は珍しく、特に横から見ると、前傾姿勢の仏像が多く見られることに気づきます。この姿勢は高所に安置されている仏像が、座して拝観する人々の方を向くためのものであると、担当学芸員から説明を受けました。このように、普段とは異なる視点から鑑賞できる点も展覧会の醍醐味です。

木造 地蔵菩薩立像 平安時代後期 10世紀 真正極楽寺 真如堂​(右側面)

第三章 三井家とのかかわり

第三章では、真如堂と深いかかわりを持つ三井家に関連した作品が数多く展示されています。三井家の元祖・三井高利と妻・かねが真如堂を菩提寺(ぼだいじ)として以来、多くの仏像や仏画、書画、堂塔が寄進されました。
 



安倍晴明蘇生図 江戸時代 17世紀  真正極楽寺 真如堂

安倍晴明が閻魔王に平伏した際、念持仏としていた不動明王が現れ、晴明の復活に協力し談判したという場面を描いた作品です。閻魔王の持つ「浄玻璃の鏡」には濃厚な胡粉(ごふん)が塗られ、裏面から光を透過すると亡者の姿が映し出される仕掛けが施されています。

このほかにも、「安倍晴明五行印由緒所」や「安倍晴明五行印」など、「真如堂縁起」に採話された安倍晴明の蘇生譚(そせいたん)に関するさまざまな作品が紹介されています。

なお、本展の図録では、大きさの都合上、出展を断念せざるを得なかった、三井家寄進の大涅槃図(だいねはんず)が紹介されています。女性の往生を説く真如堂の本尊と三井家のかかわりをひもときながら、ぜひ図録もあわせて鑑賞してみてください。

第四章 仏像の変化のありさま

第四章では、10世紀から11世紀にかけて都と比叡山に安置されてきた、さまざまな仏像が展示されています。真如堂本尊の阿弥陀如来立像は、仏像制作が穏やかな「和様」へと移行する過渡期に造立されたもので、それまで阿弥陀如来像は坐像として表されてきたなかで、初の立像とされています。この時期に天台勢力として比叡山から洛中への進出を試みていた真如堂や因幡堂の仏像を展観することで、日本の仏像様式が変貌していく過程を紹介しています。

左から、木造 薬師如来立像 平安時代後期 10〜11世紀 滋賀・西教寺、木造 地蔵菩薩立像 平安時代前期 9〜10世紀 京都・福田寺、重要文化財 木造 薬師如来立像 平安時代後期 10世紀 京都・長源寺

本章では、阿弥陀如来以外の立像も多数展示されています。それぞれの仏像が持つ特徴を堪能するのはもちろん、展示フロアを行き来しながら、ぜひ真如堂本尊との違いを実感してみてください。

ミュージアム3階に併設されたシアターでは、四季によって姿を変える真如堂の豊かな表情を、迫力あるスクリーンで体感できます。鑑賞後は展示をもう一度見て回り、移り変わる四季とともに時を重ねてきた真如堂の名宝に思いをはせてみてはいかがでしょうか。

なお、本展では講演会やトークセッション、ギャラリートーク、真如堂執事の本郷 泉観 師による法話など、さまざまな関連イベントも予定されています。作品を十分に堪能した後は、凛とした空気や風情ある枯山水の庭を鑑賞し心穏やかな時を過ごしに、ぜひ真如堂へも足を運んでみてください。
 

(ことしるべスタッフ A、I )