特別展「良寛さん―その人と禅―」をより楽しむためのコラムを連載します。
第3弾は本展覧会の監修をされている全国良寛会会長の小島正芳氏のお話です。
「長歌 月の兎 折帖」から読み解く良寛さんをお送りします。
良寛というと、子どもたちと手まりをして遊んだ優しい”お坊さん“というイメージを思い浮かべますが、実は人々を救おうという強い信念を持ち、慈愛に満ちた「菩薩行」(ぼさつぎょう)を実践した禅僧であります。本展覧会の第2章「求道者(ぐどうしゃ)良寛」に展示されている《長歌 月の兎 折帖より》は、そのような思いが強く伝わってくる作品です。
その内容は、昔インドで、猿とキツネとウサギが仲良く暮らしていましたが、天帝がある時それら動物が本当に優しい真心を持っているか確かめるために、飢えた老人に姿を変えて現われ、食べ物を乞いました。しかし、ウサギだけが食べ物を見つけられなかったので、自らの身を火に投げて、見知らぬ老人に焼けたその身を与えた、という話です。
この話を読んだ良寛は、長歌の最後に「聞く吾さへも 白栲(しろたへ)の 衣の袂(そで))救おうとした兎の行動に、「菩薩行」の神髄を見て取ったのでしょう。
この《長歌 月の兎 折帖より》は、良寛60歳代の円熟期の名品です。筆者も薫陶を受けた京都市立美術大学の学長をつとめられた書道史の第一人者 中田勇次郎先生が高く評価したもので、そのかなは、余白を生かしながら、自由に変化して書かれています。そのあたたかな線は、良寛その人をみるようです。
本作は、昭和38年に東京国立博物館で展示されて以降、行方不明となっていましたが、近年発見され、今回、63年ぶりに細見美術館に展示されています。
(本展監修・全国良寛会会長 小島正芳)
|
特別展「良寛さん―その人と禅―」 問い合わせ|細見美術館(京都市左京区岡崎最勝寺町) |