特別展「良寛さん―その人と禅―」をより楽しむためのコラムを連載します。
第4弾も本展覧会の監修をされている全国良寛会会長の小島正芳氏のお話です。
本展覧会の第3章「草庵つれづれ」には、良寛が生活する中で感じたことや思いを詩歌や書簡に託してしたためられた作品が展示されています。
その中で、ひと際、見る人の心をひきつける作品が、良寛が法弟・貞心尼(ていしんに)に送った美しい書簡です。貞心尼は浄土宗の尼僧で、長岡市福島の閻魔堂の庵主をしていました。歌人でもある貞心尼は、良寛が住庵していた長岡市島崎の草庵を訪れ、仏道の奥義を究める指導を受けています。その時、良寛は70歳、貞心尼は30歳でした。
この書簡は良寛と貞心尼が出会って3年ほど経った文政13(1830)年8月に書かれたものです。良寛は貞心尼に秋萩が咲く頃、閻魔堂を訪れる約束をしていましたが、体調が悪く行けなくなったことを伝えるものです。この頃、良寛は腹痛や下痢で苦しんでいました。そこで、良寛は丁寧に行けなくなった事情を詳しくしたためるとともに、
「秋萩の花のさかりも過ぎにけり」
「ちぎりしこともまだとげなくに」
と和歌一首を添えて贈っています。この和歌は、優しい心遣いに満ちた美しいものです。
書簡の筆跡は、優美で流麗、体調が悪く病伏している身でありながら、良寛は力を振り絞って輝きのある線で書いています。良寛は、この半年後に亡くなっていますが、貞心尼に語った辞世の句は、
「裏を見せ表を見せて散る紅葉」
で、ありました。
(本展監修・全国良寛会会長 小島正芳)
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特別展「良寛さん―その人と禅―」 問い合わせ|細見美術館(京都市左京区岡崎最勝寺町) |